研究課題
アンジオテンシンIIは、強力な血管収縮物質として知られている。近年、アンジオテンシンIIには、タイプ1から4までの受容体の存在することが報告されており、血管収縮に関わるのはタイプ1受容体である。一方、タイプ2受容体への作用は血管弛緩へと働き、その一部にキニン/NO系が関与することを明らかとした。しかしながら、この系以外にもホスファターゼの活性化が血管弛緩を誘導すると報告されているが、その詳細は明らかでない。我々は、この機構を明らかにする目的の一つとして、非選択的プロテイン・チロシンホスファターゼ (PTPase)の阻害薬、オルトバナジン酸(VO4)を用い検討を行った。ラットリング標本にVO4を加えると、濃度依存的な収縮応答が認められた。このVO4による収縮応答は、EGF受容体阻害薬、Src活性阻害薬、あるいはRho kinase 阻害薬をVO4添加前に処置することにより抑制された。また同様の結果は、他のPTPase阻害薬を添加したときにも認められた。次に、VO4による血管収縮機構を血管平滑筋細胞(VSMC)にて検討した。VSMCをVO4で刺激するとミオシン脱リン酸化酵素(MLCP)のリン酸化体が増加し、この増加は、EGF受容体阻害薬、Src活性阻害薬、あるいはRho kinase阻害薬により抑制された。さらに、VO4によるSrcリン酸化、EGF受容体リン酸化について検討したところ、EGF受容体リン酸化は、Src活性阻害薬の添加により抑制されたが、Srcリン酸化は、これら全ての阻害薬の影響を受けなかった。これら結果より、VO4は何らかのプロテイン・チロシンホスファターゼを阻害してSrcを活性化し、EGF受容体の活性化を介し、その下流のRho kinaseを活性化することによりMLCPを抑制し、持続的な収縮を引き起こすと考えられた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Vascu Pharmacol
巻: 58(4) ページ: 319-325
10.1016/j.vph.2012.11.004.