リゾホスファチジン酸(LPA)などのリゾリン脂質は、Gタンパク共役型受容体を介して多彩な細胞機能を調節し、血管新生の関わる様々な疾患の病態形成と関連している。関節リウマチ(RA)では、炎症刺激を受けた滑膜細胞(SC)の著しい増殖、COX-2発現の増大と作られたプロスタグランジンE_2による血管透過性の増大や関節痛の強烈な増幅と関節破壊の促進などがみられる。我々は、RA患者のSCでのCOX-2発現が、RA患者の関節滑液中のLPAとIL-1によって相乗的に増大することを見出した.本研究ではRASCのLPA受容体を介する応答とRAの病態形成との関連を明らかにする目的で、(1)RASC上のLPA受容体の性質(2)LPA刺激後のRASCの増殖、(3)LPA受容体に対するモノクローナル抗体(mAb)の作製について検討した。その結果、RASCの主要なLPA受容体はLPA_1であり、LPA_2とLPA_3は殆ど発現しないが、siRNAを用いてLPA_1 mRNAの発現を90%以上阻害してもLPA刺激後のCOX-2発現の低下は部分的であることから、LPA_1の代謝回転が遅く、細胞上に残存するLPA_1が機能する可能性が示唆された。この点について、現在作成中のLPA_1に対するmAbを用いて、LPA_1の局在性と併せて検討する。また、RASCの細胞増殖はIL-1で亢進するがLPAでは有意な効果が認められなかった。正常線維芽細胞の増殖に対して、IL-1もLPAも有意な効果を示さなかった.この結果とCOX-2誘導の結果から、LPAに対して応答するには、細胞が予め何らかの刺激を受けている必要性を示唆しており、現在、RAでのSCの細胞外環境を考慮し、候補となるプライミング因子とLPA_1を介するシグナリングを解析している
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