研究課題/領域番号 |
22590096
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
田元 浩一 徳島文理大学, 香川薬学部, 教授 (50088861)
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研究分担者 |
野地 裕美 徳島文理大学, 香川薬学部, 准教授 (30183552)
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キーワード | 関節リウマチ / 滑膜細胞 / リゾリン脂質 / リゾホスファチジン酸 / LPA受容体 |
研究概要 |
リゾホスファチジン酸(LPA)は、Gタンパク共役型受容体を介して多彩な細胞機能を調節する。関節リウマチ(RA)では、炎症刺激を受けた滑膜細胞(SC)が著しく増殖し、COX-2発現が増大し、生じたプロスタグランジンE_2(PGE_2)により血管透過性が増大すると共に、強烈な関節痛と関節破壊が亢進する。しかも、RASCでのCOX-2発現は、LPAとIL-1によって相乗的に増大するが、詳細なしくみは明らかでない。本研究ではRASCのLPA受容体を介する炎症応答とRAの病態形成との関連を解明する目的で、(1)RASC上のLPA受容体の性質、(2)LPA刺激後の細胞内シグナリング、(3)LPA刺激とRASCの増殖、(4)LPA受容体に対するモノクローナル抗体の作製について検討している。その結果、RASCの主要なLPA受容体はLPA1であり、LPA2やLPA3の発現は著しく少ないが、3種のLPA受容体サブタイプのsiRNAを用いた結果、COX-2発現にはLPAIが関与すること、LPA1をノックダウンするとLPA3発現が有意に増大し、特定の条件下ではCOX-2発現も増加することを見出した。また、RASCをLPA刺激すると、関節炎や関節破壊に関わるCOX-2やMMP-1、MMP-3及びADAMTS4が発現するが、これらはGi及びG12/13とMAPkinaseやNFkBを介して誘導されることを明らかにした。また、RASCをLPA刺激しても細胞の増殖には影響しないが、RASCのLPA1をノックダウンするとウシ胎児血清存在下での増殖が低下すること、LPA2やLPA3をノックダウンしても増殖低下は認められず、LPA1と他の因子の受容体の間で増殖に関するクロストークのある可能性が示唆された。これらの点を踏まえ、新規のモノクローナル抗LPA1抗体を用いて、LPA1を介する細胞内シグナリングの解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RASCに発現しているLPA受容体を介してCOX-2やマトリックスメタロプロテアーゼの発現に至るシグナリング経路についての解析が進み、RASCの細胞外環境が病態形成において重要な役割を果たしていることを示唆する結果も得られている。そして、LPA1に対するモノクローナル抗体も作製できたので、今後の研究の進展に役立てることができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
RAの病態形成におけるLPA受容体の役割を解析する過程で、LPA受容体サブタイプ間、あるいはLPA1と他の細胞外因子に対する受容体などのクロストークの重要性が示唆される結果が得られたので、RASCの細胞外環境を変化させた場合のLPA受容体応答についても研究を進める。LPA受容体に対する新規のモノクローナル抗体も今後の研究の有力な武器になると考えている。モノクローナル抗体を活用してLPA受容体の性質や細胞内シグナリングについての解析を進め、RAの病態形成のしくみの解明とRA患者のQOLの改善に役立つ知見を得るようにしたい。
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