膜結合性グアニル酸キナーゼMAGI(membrane-associated guanylate kinase with inverted orientation)ファミリー分子の一つであるMAGI-1を選択的に認識する抗体を作製し、ラット全身臓器における分布をウェスタンブロット法により解析したところ、MAGI-1はスプライシングバリアントと思われる複数のバンドとして検出され、大脳、海馬、小脳など脳組織に豊富に存在していることがわかった。また、胎生期から生後発達期の脳におけるMAGI-1の発現変化を同様に検討したところ、胎生期では、分子量120kDa程度の分子が多く、生後発達期には分子量160kDa程度の分子が増加することがわかった。免疫組織染色によりラット神経組織におけるMAGI-1の局在を検討したところ、嗅球の糸球や脊髄の後根進入部での局在が認められた。これらのことから、MAGI-1は、神経突起の伸展過程において何らかの機能を果たしていると考えられたため、突起伸展モデルとしてPC12細胞を用いた検討を行った。PC12細胞においてMAGI-1をRNAi法によりノックダウンすると、神経成長因子(NGF)依存的な突起伸展が抑制されることがわかった。このMAGI-1による神経突起伸展制御の分子機構を明らかにするため、NGF刺激により活性化される情報伝達経路に関連する分子との相互作用を、哺乳動物細胞過剰発現系を用いた免疫沈降法により検討したところ、p75NGF受容体と結合することがわかった。現在、NGF刺激によるp75NGF受容体を介した情報伝達経路におけるMAGI-1の機能を解析している。
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