研究課題
マラリアの制圧を考えると薬剤耐性を克服できる薬剤の開発は最優先課題である。マラリアの制圧に向け、2010年までにマラリアによる死亡率を激減させることが決議された。しかし、現在も年間100万人以上の人々がマラリアで命を落としており、WHOが録唱するArtemisinin-based combination therapyも10年も経たないうちにカンボジア国境を中心に薬剤耐性マラリアが報告されるなどマラリアを取り巻く環境は険しいものである。私は薬剤耐性熱帯熱マラリア原虫に有効な新規抗マラリア薬を開発し、マラリアのコントロールに貢献したい。H22年度の研究成果を下記に示す。1.マラリア流行地に適した1,2,4,5-テトラオキサシクロアルカン類化合物(N-89)の投与スケジュールを検討した。マラリア患者を治療する事を想定して、血中原虫感染率が5%の時にN-89を経口投与し(68mg/kgx 3回/日×3日)、その推移を観察した。その結果、N-89投与3回目から感染率の低下が見られ、その後は感染率が上昇する事無く薬剤投与完了時には血中原虫は検出されなかった。2.血中感染率を10%にあげた実験系で上記の投与スケジュールでN-89を経口投与したところ、感染率5%の時と同じ結果が得られた。これらの結果より、N-89は高マラリア原虫感染マウスにおいてもマラリア原虫を死滅する能力を有する事が示唆された。また、N-89作用機序の解析研究でヒト由来のタンパク質が2種同定されたので、これらタンパク質の機能について検討を開始した。3.重症マラリア患者の治療を目的とした注射剤(静脈内)開発研究で、懸濁化剤としてHPMC、Cremophore、及びEtOHを1:1:1に配合してN-89懸濁液を作成した。このN-89溶液の抗マラリア活性評価と体内動態解析の結果、従来のolive oilに溶解したN-89より薬効が低下し、血中半減期も短くなっていた。今後他の可溶化剤を用いて製剤工夫検討と毒性試験を行う計画を立てている。
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Parasitology Intentional
巻: (in press)
Chemical Science
巻: 1(2) ページ: 206-209
Heterocycles
巻: 81(5) ページ: 1193-1229
http://www.pharm.okayama-u.ac.jp/lab/joho/