研究課題
マラリア薬はWHOが提唱するArtemisinin-based combination therapyが主として用いられている。しかし、カンボジア国境を中心に薬剤耐性マラリアが報告されるなどマラリアを取り巻く環境は険しいものである。私は、薬剤耐性マラリアを克服できる新しいマラリア治療薬の開発を行い、マラリア制圧に寄与することを研究目的とし、環状過酸化化合物、及び天然資源を中心に培養系における薬効解析を行う。また、臨床試験に向けて最適の抗マラリア候補薬を選抜し、選抜した化合物の体内動態、安全性試験、及び抗マラリア作用機序の解明までを本研究で行う。本年度の研究成果を下記に示す。1)多剤耐性熱帯熱マラリア原虫株に対する環状過酸化化合物10種、および天然生薬成分由来の化合物20種の薬効を解析した結果、1μM以下で抗マラリア活性を示す化合物を1種見出した。この化合物は環状過酸化構造を有するものの、種々の誘導体を用いたか解析研究で、構造-活性相関を見出せる一連の関連性を見出すことが出来なかった。今後置換基を変えた誘導体を用いて解析を行う。作用機序の解析研究については候補化合物の選抜が終了していないため、次年度以降に行うことにした。2)過酸化化合物を含む関連化合物を用い、毒性出現有無をホストのモデル細胞系で調べた結果、細胞培養系での毒性発現は10μM以上であり、マラリア原虫を選択的に阻害することが判った。一方、動物を用いた抗マラリア薬効評価では、抗マラリア活性が見られたものの活性は弱く、結果として完治には至らなかった。3)2)に研究で完治効果を示さなかった理由の一つとして体内半減期が短い事が考えられる(半減期:1時間)。マラリアの流行地で使用する事を想定した場合、血中半減期は数時間以上を必要とするため、現在、置換基の導入、及び既存の剤形改善法を駆使した製剤改善研究を計画している。
2: おおむね順調に進展している
H23年度に計画した内容はほぼ実施しており、その結果の解釈、及び現在改善に向けて研究を遂行しているので、おおむね順調に進展していると判断した。
抗マラリア候補化合物の臨床使用に適した化合物の選抜、体内動態解析、及び標的分子の探索研究を通じて新規抗マラリア候補化合物を見出す。
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Parasitology International
巻: 60 ページ: 270-273
10.1016/j.parint.201 1.04.001
巻: 60 ページ: 488-492
10.1016/j.parint.2011.08.017
Research on Chemical Intermediate
巻: (In press)