肥満は高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の主要な危険因子であり、したがってその原因解明および治療薬の開発は重要と考えられる。私達は現在までの研究の結果、肥満(レプチン抵抗性による肥満)の機構として「小胞体ストレスの関与」の可能性を見出している。小胞体ストレスは不良品タンパク質が細胞内に蓄積することによって生じるストレスである。従って、小胞体ストレスの軽減を標的(目的)とした薬物は肥満の治療薬として有効であると考えられる。そこで今回、タンパク質の折り畳み促進活性薬物、すなわちケミカルシャペロンに着目し、小胞体ストレス軽減作用を有する薬物の探索、解析を試みた。 前回までの検討の結果、私たちは、小胞体ストレスを標的とした新しい薬物を同定することに成功し、さらに中枢移行性の向上をねらった化合物の合成に成功した。さらに小胞体ストレスによる細胞死抑制効果を有することも確認している。そこで、本薬物を高脂肪食負荷による肥満モデルマウスに投与し、抗肥満効果の有無を検討した。その結果、予想に反して、目立った抗肥満効果は本薬物投与によっては発揮されなかった。 本薬物はマウス個体レベルで目立った副作用、毒性を示さなかった。今回、本薬物は肥満には効果は無かったが、小胞体ストレスによる細胞死軽減効果は有していたことより、別の小胞体ストレス疾患モデルに対して有効である可能性もあると考えられ、今後の検討課題としたい。
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