研究概要 |
本研究では,新規制がん剤開発を目指し,内在性アポトーシス抑制因子XIAPを創薬ターゲットとした阻害剤の創製を目的としている.私共は,独自に開発したin silico分子設計手法(COSMOS法)を用いて,XIAP/Smac結合部位を創薬ターゲットドメイン(Hot Spot)として,XIAP阻害剤(アンタゴニスト)となる候補ペプチドを設計し,その実測結果から最適ペプチドとしてAVPFを同定した.平成22年度は,XIAPアンタゴニストペプチドAVPF/XIAP相互作用について,in silicoで結合エネルギーのDecomposition analysisを行い,この相互作用に重要なXIAP側のアミノ酸残基(Hot amino acids)を同定した.このHot amino acidsを支点として,XIAPアンタゴニスト低分子化合物設計のためのpharmacophoreを構築し,我々が開発した結合エネルギー分布度類似評価法(Mimetics Rate(MR)法)を用いて化合物ライブラリ(約300万化合物)からスクリーニングを行った.選出された化合物群について,蛍光偏光測定を用いてXIAP-BIR3への結合能の評価を行った結果,XIAP-BIR3結合能を有する化合物ITM-017を見出すことができた.またこの化合物は,白血病細胞株HL-60細胞に対してアポトーシス誘導効果を有することが判明した.ITM-017のXIAP Hot Spot内のS1~S4ポケットにおける結合様式を考察すると,S1,S2ポケットにおける水素結合,及びS3,S4ポケットにおける疎水性相互作用を満たしており,基本骨格としては優れているといえる.しかし,S1ポケットにおいてITM-017末端の硫酸基が突出しており,これがXIAPとの結合にマイナスの影響を及ぼすことが予測され,さらなる構造最適化が必要と考えられる.
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