研究課題
医薬品設計においてシード・リード化合物中にメチル基や塩素原子を一つ導入したり、複素環のヘテロ原子の配置を変えたりすることにより、活性が一度に10倍以上向上することがしばしば観察される。このような活性変化をFEP(自由エネルギー摂動)/TI(熱力学積分)法を用いて、精度よく予測することを目標としている。今年度は、実際の医薬品に適用する前に、ベンゼン誘導体の水和エネルギー差を指標として本法の計算精度の検証を行なった。実際の医薬品設計における構造変換を視野に入れ、ベンゼン⇔トルエン、ベンゼン⇔クロロベンゼン、ベンゼン⇔ピリジンの3つの系において、FEP/TI法による水和エネルギー差の計算を行なった。分子動力学計算プログラムCHARMmを用いて、3つの系の水和自由エネルギー差を計算したところ、ベンゼン⇔トルエンおよびベンゼン⇔クロロベンゼンの二つの系では、実測値0.02および-0.26kcal/molに対して、FET/TI法による計算値は-0.24/-0.15kcal/molおよび-0.13/-0.12kcal/molとなり、誤差は0.3kcal/mo1内にあった。ベンゼン⇔トルエン系では符号が逆転しているため、計算条件の改良により改善できるか否か検討が必要と思われる。一方、ベンゼン⇔ピリジン系においては、実測値-3.82kcal/molに対し、誤差が1kcal/mol以上存在し、また試行毎の計算値も安定しなかった。この系においては、原子の消滅と大きな原子電荷の変化を伴うため、水の再配向に要する時間や原子の消滅時におけるエネルギー変化の制御など、計算条件を見直す必要がある。
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