研究課題/領域番号 |
22590110
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
仲西 功 近畿大学, 薬学部, 教授 (10362576)
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研究分担者 |
北浦 和夫 京都大学, 薬学研究科, 教授 (30132723)
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キーワード | 自由エネルギー摂動法 / 熱力学積分法 / 水和エネルギー / 結合自由エネルギー |
研究概要 |
医薬品設計においてシード・リード化合物中にメチル基や塩素原子を一つ導入したり、複素環のヘテロ原子の配置を変えたりすることにより、活性が一度に10倍以上向上することがしばしば観察される。このような活性変化をFEP(自由エネルギー摂動)/TI(熱力学積分)法を用いて、精度よく予測することを目標としている。 今年度は、まず昨年度の実施例で計算誤差が大きかったベンゼン⇔ピリジン系水和エネルギー計算において、ピリジンの電離平衡の効果を取り入れた。実験値-3.8kcal/molに対し、pHが7の条件では-5.1kcal/molと依然1kcal/mol以上の誤差を示したが、実験時の溶液のpH(弱塩基性と考えられる)を考慮するとこの誤差は小さくなると予想された。 次に、タンパク質-リガンド系として、FXa複合体系及びCK2α複合体系について実験値を再現するシミュレーション条件の検討を行なった。FXa複合体系では、塩素原子置換効果の再現を試みたが、本複合体系では重要となるタンパク質とリガンド間に働くCl-π相互作用やカチオン-π相互作用のような非典型的相互作用を力場で安定的に取り扱うことが困難であり、従来の計算精度を上回ることができなかった。本複合体系は、検証系とするには不適切であることが明らかとなった。一方、CK2α複合体系では、ヘテロ環の配置変換効果の再現を試みた。その結果、3個のリガンドのうち2個のリガンドの活性値を誤差が0.5kcal/mol以内と大変精度よく予測することができた。しかし、1個のリガンドについては誤差が約3kcal/molとなった。 次年度には、この大きな誤差の原因を究明するとともに、CK2αの系においても、塩素原子置換あるいはメチル基置換の実験データを収集し、シミュレーション条件の検証を行なう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低分子系の水和エネルギーの再現は概ね計画通り達成できている。高分子系では、一部研究対象とする系の選定に失敗があったが、結合自由エネルギー変化を精度よく再現できる系もでてきている。
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今後の研究の推進方策 |
低分子系では、弱酸性の化合物の水和エネルギーの算出についても電離平衡を考慮し、ベンゼン-ピリジン系のような実験値の再現を試みる。高分子系ではCK2α複合体を対象とし、今期に実験値を再現できなかった系の原因究明とともに、塩素置換やメチル置換効果の再現を試みる。
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