研究概要 |
核内レセプターはリガンド依存的に転写を制御している。リガンドと結合した核内レセプターはさらにコアクチベータと結合し転写を引き起こす。核内レセプターとコアクチベータ(転写共役因子)の結合は-LXXLL-配列を認識することで起こる。この-LXXLL-を持つ短鎖ペプチドは、このタンパク質-タンパク質相互作用を阻害する可能性があり、転写阻害剤になりうる。 LXXLLシークエンスを持つペプチドの中に、α、α-ジ置換アミノ酸、側鎖架橋構造を導入することで、安定なヘリックス構造を形成できるペプチドの合成を行った。 ヘリックス構造を安定化させるジ置換アミノ酸としてα-アミノイソブチル酪酸(Aib)を用いた。側鎖架橋構造を構築するユニットとしてアリル基を有するセリン誘導体を用いた。これらのアミノ酸を含む10数種類のヘプタペプチドを設計、合成した。側鎖架橋構造の構築は閉環メタセシス反応及び水素化反応で行った。合成したペプチドの二次構造解析は、溶液状態ではNMR,IR,CDスペクトル、結晶状態ではX線結晶解析を用いて行った。 その結果、溶液状態において、ペプチドは右巻きのヘリックスであることが示唆された。溶液状態で右巻きのα-ヘリックスと示唆されたペプチドは、再結晶で良質な単結晶が得られたのでX線結晶解析を行った。その結果、溶液中と同様の右巻きのα-ヘリックスであることが明らかとなった。また、ビタミンDレセプターとコアクチベータの結合を阻害することも明らかにした。特に側鎖架橋構造に水酸基を導入したペプチドは強力な阻害活性を有していた。
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