研究課題
重要な漢方薬「マオウ」の基源は野生マオウ属植物の地上部である。局方には3種のマオウ属植物が原植物として収載されているが、Ephedra sinicaが主たる原植物となっている。E.sinicaとの近縁関係が推測されているマオウ属植物にシベリア地域に分布するE.dahuricaと中央アジアからヨーロッパに分布するE.distachyaが挙げられるが、これらの系統的な解析とE.sinicaとの関係は詳細に検討されていなかった。私は、自身が採集したシベリア地域のE.dahuricaおよびヨーロッパアルプスのE.distachya試料、金沢大の中国及びモンゴルで採集されたE.sinica試料、さらにKassel大学のFreitag教授のグループからのE.distachya試料についてDNA解析を行い、中国～ヨーロッパにわたるE.sinica/E.dahurica/E.distachya の分布と系統関係を解明した。その結果、E.sinicaとE.dahuricaとはsynonymとしてよいことを明らかにした。さらに、モンゴル西部から中央アジアのE.distachyaはこれまでに形態に基づく分類がなされているが、各地域に様々な形態を有する変種の存在が報告されている。これら形態的分類と遺伝的な分類の関係を明らかにした。また、各地域のE.sinicaのエフェドリン含量を確認し薬用としての品質についての評価をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
中国及びモンゴルで採集を行ったE.sinica、シベリア地域で採集したE.dahuricaさらにKassel大学のE.distachyaの試料のDNA解析を行い、中国～ヨーロッパにわたるE.sinica/E.dahurica/E.distachyaの分布と系統関係を明らかにすることができた。結果、E.sinicaとE.dahuricaとはsynonymとしてよいことを明らかにした。モンゴル西部から中央アジアのE.distachya形態的分類と遺伝的な分類の関係を明らかにできた。
「E.sinica関連マオウ属植物のユーラシア大陸での分布と品質評価」についてはほぼ目標を達成できた。一方、中国では局方収載マオウ属植物が重要な薬用資源であり、古来より伝統医学に用いられて来たが、中国以外の地域ではE.sinica以外のマオウ属植物も薬用に用いられている。即ち南アジアにおいてはE.geradiana、E.saxatilis、中東からヨーロッパではE.major等である。特にインドにおけるマオウ属植物はその伝統医学であるアーユルヴェーダ医学で用いられている。そこで、中国にあまり産せず、E.sinicaとは系統を異にするマオウ属植物種についての解析をする。それにより、アジアの伝統医学で利用されてきたマオウ属植物について、より包括的な系統関係を明らかにすることが出来る。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件)
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