重要な漢方薬「マオウ」の基源は野生マオウ属植物の地上部で、局方には3種のマオウ属植物が原植物として収載されている。そのうち、現在ではEphedra sinicaが主たる原植物となっている。前年度までにE. sinica と近縁であると考えられたE. dahurica およびE. distachya とその関連マオウ属植物について研究を行い、E. dahurica/E. sinicaが同種と考えられること、またE. dahurica/E. sinicaと、E. distachyaとその亜種のグループは近縁ではあるが系統的には区別可能なであることを明らかにした。また、モンゴル西部から中央アジアのE. distachyaの形態的分類と、遺伝的分類の関係を明確にできた。そこで、各地域のE. sinicaのエフェドリン含量を確認し、薬用としての品質についての評価をおこなったところ、地域毎にエフェドリン含量に違いのあることが判り、産地が重要であることが判った。一方、中国以外の地域においてもEphedra属植物が伝統医学において生薬として用いられている。南アジアにおいてはE. geradiana、E. saxatilis、中東からヨーロッパではE. major等である。特にインドにおけるマオウ属植物は、その伝統医学であるアーユルヴェーダ医学で用いられている。そこで、中国にあまり産せず、E. sinicaとは系統を異にすると考えられるマオウ属植物種について、研究をおこなった。金沢大学およびKassel大学収蔵E. geradiana関連のマオウ属植物のDNA解析を行った。これにより、アジアの伝統医学で利用されてきたマオウ属植物について、包括的な系統関係を明らかにすることが出来た。
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