研究課題/領域番号 |
22590118
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
白崎 哲哉 熊本大学, 生命科学研究部, 准教授 (30264047)
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研究分担者 |
高濱 和夫 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (80150548)
副田 二三夫 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (10336216)
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キーワード | 環境 / 衛生薬学 / 神経科学 / ストレス / 生理学 |
研究概要 |
まず負の環境要因として、母仔隔離の影響を検討した。すでに海馬錐体細胞のセロトニン誘発GIRK電流の振幅が増強されることを見出しているが、同じく情動に関与するノルアドレナリンについて、GIRK電流振幅は影響されないものの、GIRK電流を誘発する細胞の比率が、錐体細胞と非錐体細胞のいずれにおいても増加した。グルタミン酸誘発カチオン電流とGABA誘発Cl^-電流は、1例を除いてすべての細胞で記録され、電流振幅に対する影響は見られなかった。生後1カ月目にオープンフィールド試験、高架式十字迷路試験、ホールボード試験を6カ月目にオープンフィールド試験と高架式十字迷路試験を行ったが、有意な影響は見られなかった。これらのことは、母仔隔離の影響が不安行動試験で顕著には現れないものの、細胞レベルでは情動に影響するモノアミン系の機能が影響されていることを示す。 興味深いことに、正の環境要因として母仔隔離時に小鳥のさえずりと小川の音を自然環境音として聞かせたところ、セロトニン誘発GIRK電流の振幅がコントロールレベルに戻った。セロトニンに応答する細胞の比率は変わらなかった。海馬におけるGIRK2mRNA発現レベルを調べたところ、母仔隔離時と同じようにコントロールに比べ有意に減少していた。また、自然環境音の効果は、生後1カ月目の行動試験に影響を与えなかった。 本知見は、生活環境が脳機能に与える影響を単一ニューロンレベルで詳細に検討する手がかりを与えるものと思われ、今後さらに検討する必要がある。
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