研究概要 |
1. in vivo における脂肪酸によるERストレス惹起効果の評価 ラットの静脈中にパルミチン酸、オレイン酸、cis-バクセン酸、またはパルミトオレイン酸をinfusionし、肝臓、筋肉、膵臓におけるERストレスを評価した。肝臓においては、パルミチン酸投与群でXBP-1やGRP78発現量が有意に高くなっていた。一方、膵臓ではBSA投与群や他の脂肪酸投与群に比べ、パルミチン酸投与群におけるXBP-1発現量がやや高値を示したが、GRP78発現量には大きな差は認められなかった。筋肉ではいずれの脂肪酸でもGRP78およびCHOP発現量に差は認められなかった。血中遊離脂肪酸レベルは生理食塩水群に比べ、脂肪酸投与群でやや高値を示したものの、投与した脂肪酸のレベルが特に高いわけではなかった。 2. メタボリックシンドロームモデルラットにおける遊離脂肪酸の解析 遺伝的に肥満、高血圧を呈するSHR-NDmcr-cp/cpラットの肝臓および膵臓におけるERストレスの評価を行ったところ、肝臓、膵臓ともに、対照群であるcp/m+ラットまたはWKYラットと比較してGRP78, CHOP, XBP-1発現量の上昇は認められなかった。本ラットの肝臓および血清中では、トリグリセリド量は、対照群の5から10倍高かったにもかかわらず、遊離脂肪酸レベルには有意な差は認められなかった。本モデルラットにおけるインスリン抵抗性は遊離脂肪酸は関与していないものと考えられる。 3. 遊離脂肪酸レベルの人為的コントロール パルミチン酸を血液中に投与したERストレスモデルラットについて、クロフィブリン酸の効果を検討したところ、血中の遊離脂肪酸レベルが低下し、肝臓のERストレスマーカー発現量も低下した。 以上の結果より、薬物により遊離脂肪酸レベルを低下させることによって、ERストレスを軽減できる可能性が示唆された。
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