1)プロバイオティクスによる薬物動態制御機構の解明 ヒト小腸モデルとして3週間培養したCaco-2細胞、プロバイオティクスとして2大腸内細菌であるLactobacillus属とBifidobacterum属の菌種を用い、Breast Cancer Resistance Protein(BCRP)発現に対する影響を評価した。BCRPの遺伝子発現量はReal-time PCR法、輸送活性は特異的基質を用いて測定した。転写調節因子のタンパク発現量および核移行はWestern Blot法および免疫染色法により測定した。さらに、BCRP遺伝子のプロモーター領域と転写調節因子との結合はChIP assay法にて測定した。その結果、Bifidobacterum属の市販菌種の暴露により、Caco-2細胞におけるBCRPの遺伝子発現量、タンパク発現量および輸送活性が増加した。さらに、本菌種によるBCRPの転写活性化は、複数の転写因子とBCRP遺伝子のプロモーター領域との結合量の増加および相互作用に起因することが明らかになった。
2)脂質異常症予防・治療におけるプロバイオティクス摂取の医療経済学的評価 マルコフモデルを構築し、冠動脈疾患(Coronary Heart Disease : CHD)予防における、プロバイオティクス摂取の医療経済学的効果を評価した。分析視点は社会の立場とした。その結果、日本人のCHD予防において、プロバイオティクスの摂取は費用対効果において優れていることが示された。従って、軽度の脂質異常者には、積極的なプロバイオティクス製品の摂取が推奨され、そのことにより、CHDの発症が予防され、国民医療費の増加の抑制に寄与できると考えられる。
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