前年度に構築したゲムシタビンおよび代謝物の測定法を用いて外来化療センターに通院、あるいは肝胆膵外科に入院した患者のうち、ゲムシタビン投与患者を対象に投与開始前、投与後30分、45分、60分、90分、120分において採血を行い、その血清画分を用いて各時間の濃度を求めた。これらの値を基に薬物動態学的パラメータであるAUC、および排出速度定数を求めた。さらに、全血よりDNAを抽出し、ゲムシタビンの代謝酵素であるシチジンデアミナーゼ(CDA)の遺伝子多型を調べた。その結果、今回の解析を行った患者においてCDA遺伝子型はいずれも野生型であった。ゲムシタビンのAUC、および排出速度定数とCDAの遺伝子型との関連について報告されている論文のデータと比較したところ、ほぼ野生型のCDAを有する場合の値と一致した。今回、解析した患者においては、顕著な副作用は認められなかった。副作用発現の有無の観点からも薬物動態学的パラメーター、および遺伝子多型解析の結果は妥当であることが示された。 一方、ゲムシタビン療法において、耐性は治療の継続において大きな課題となっている。そこで、ヒト膵癌由来細胞を用いてゲムシタビン耐性と薬物の動態との関連を精査した。3種のゲムシタビン応答性の異なるヒト膵癌由来細胞にゲムシタビンを添加し、添加後の細胞内外のゲムシタビンの動態と生存率との関連を精査したところ、各細胞によってその動態プロファイルが異なることが判明した。これらの結果から、ゲムシタビンの動態が、薬物耐性に関与している可能性が示された。
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