【目的】岐阜大学病院外来がん化学療法室にて高度催吐リスク抗がん剤を用いた治療を受ける乳癌患者を対象として、デキサメタゾン(DEX)4mgを含有する口腔内速溶解フィルムの制吐効果ならびに服用感をデキサメタゾン錠と比較した。【方法】施行されたがん化学療法レジメンはエピルビシン+シクロホスファミド(EC療法)±5-フルオロウラシル(FEC療法)である。制吐対策は日本癌治療学会による制吐対策ガイドラインに準じて行い、抗がん剤投与30分前にニューロキニンNK_1拮抗薬のアプレピタント(内服)、5-HT_3受容体拮抗薬のグラニセトロン(静注)およびデキサメタゾン(静注)の3剤を投与し、2-3日目にアプレピタント(内服)、2-4日目にデキサメタゾンの錠剤もしくはフィルム製剤を内服した。患者17名をデキサメタゾン錠剤群とフィルム群に無作為に群分けし、制吐効果および服用感についてクロスオーバー試験により評価した。服用感についてはアンケートにより調査した。なお、フィルム製剤については(株)ツキオカにてGMP基準に準じて作製し、含量および均一性試験は岐阜大学病院薬剤部にて実施した。【結果】作製されたフィルム剤はジンジャー味とココア味の2種であり、それぞれの含量試験結果は、ジンジャー味で4.05±0.07mg(平均値±標準偏差)、許容値(AV値)=4.23、ココア味で3.92±0.10mg、AV値=6.41であり、いずれも日本薬局方でのAV<15の基準を満たし均一であり、試験に供した。急性期ならびに遅発期における悪心・嘔吐に対する完全抑制率は、錠剤群およびフィルム群間で有意差はなかった。一方、服用感については、服用量が少なくて使いやすいと答えた患者はフィルム群で顕著に多かったが、味については苦いと答えた患者がフィルム群で多い傾向であった(ジンジャー味)。【考察】デキサメタゾンは強い苦みを有し、フィルム製剤ではデキサメタゾン末をそのまま含有しているため、服用時の苦味の問題が指摘された。当初、フィルム剤はジンジャー味のみであり、服用感についてはジンジャー味での評価である。この点について改良する必要があり、ココア味に変更した結果、苦味の問題はほぼ解消された。
|