平成22年度は、脳内自己刺激行動のRun-Way法を用いた意欲や動機づけの評価系モデルにおける神経伝達物質の寄与を解明するため、ドーパミン関連薬物の関与について検討を行った。選択的ドーパミン取込み阻害薬であるGBR12909を用いた検討において、GBR12909は用量依存的にRun-Wayの走行スピードを上昇させた。したがって、GBR12909は意欲や動機づけの低下を改善する作用がある可能性が考えられた。さらに、GBR12909による走行スピードの上昇は、ドーパミン受容体拮抗作用のあるハロペリドールによって有意に拮抗された。以上のことから、本評価系モデルにおけるGBR12909の意欲および動機づけの改善作用は、主にドーパミン神経を介した作用であることが確認された。 一方、本評価系モデルにおいて抗うつ薬のImipramineの作用を検討した結果、用量依存的にRun-Wayの走行スピードを低下させることが明らかとなった。このことから、本評価系モデルは抗うつ薬が効果を示す神経作用点と異なる神経系を介した行動変化を評価している可能性があると考えられた。これらの研究成果は、第49回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会中国四国支部学術大会(平成22年11月6日、米子)にて発表した。 現在、意欲や動機づけの改善におけるドーパミン受容体サブタイプの関与を詳細に解明するため、GBR12909の作用に対するRaclopride(ドーパミンD2受容体選択的拮抗薬)、SCH23390(ドーパミンD1受容体選択的拮抗薬)およびNafadotride(ドーパミンD3受容体選択的拮抗薬)の影響を検討中である。さらに、本評価系モデルと抗うつ薬の評価系モデルとの異質性を明確なものとするため、GBR12909ならびに各種ドーパミン関連薬物の強制水泳実験に対する影響について検討する予定である。
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