研究課題
透析によって除去される薬物は透析後に補充しないと治療効果が期待できないが、透析による薬物の挙動についての報告は極めて少なく、透析技術の進歩に遅れを取っている。そのため血液透析を徹底的に科学する系統的な研究を行い、臨床適用可能な薬物除去率予測式を完成させ、除去率算出のための臨床治験を不要にしたい。薬物除去率予測式を臨床適応可能にするために独自に開発した超小型透析器を用いたin vitro透析モデルによる実験系を用いて吸着による影響について詳細に検討した。さらにin vivo透析モデルラットを用いて予測された薬物除去率と実測値の整合性について検討した。今後、様々な除去率変動要因を明らかにすることによって、今後、精度の高い予測式の完成を目指す。23年度の成果は以下のとおりである。1.In vitroによる各種アミノグリコシド系抗菌薬のリン酸緩衝生食溶液を超小型透析器に循環することによる水系吸着実験を行った結果、AN69膜はこれらの薬物の吸着力が高く、そのうちアルベカシンに関してはin vitroの結果と臨床成績とがほぼ一致したため、この実験法の妥当性が検証された。またアミノグリコシド系抗菌薬の中毒時の治療にAN69膜による薬物吸着の有用性を明らかにするための臨床検討が2症例終了した。2.両側腎動脈結紮ラットの早期死亡原因が高窒素血症、アシドーシスに伴う高カリウム血症、溢水であることが明らかになったため、水分制限、デンプン食、透析液を重曹透析液にし、透析液カリウム濃度を低下させることで延命が可能になった。ただし、様々な実験が可能になるような長期生存可能な透析モデルラットにまでは至っていない。
2: おおむね順調に進展している
アルベカシンの臨床成績は2名が終了しており、あと1例の症例が見つかれば論文にする予定である。透析モデルラットの延命化に成功したが、複数回の血液透析を行うところまでは生存できていない。
AN69膜への薬物吸着については重篤な中毒症状が起こりやすく、かつ陽性荷電薬物であるダビガトラン、コリスチンなど幅広い薬物についてスクリーニングし、吸着の認められた薬物については超小型ダイアライザー(ミニモジュール)を用いてより、臨床に近い条件で吸着性能を調べ、さらに床研究を実施する。またCHDF中の薬物除去についての検討はわが国で大幅に遅れており、海外のCHDF施行条件とわが国のCHDF施行条件は大き、く異なるため、CHDF時の薬物療法に関する臨床検討及び基礎研究を推進し、患者の腎機能及びCHDFの施行条件が分かれば投与設計できるようなノモグラム、あるしは数式を完成させたい。
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