研究課題/領域番号 |
22590140
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研究機関 | 北海道薬科大学 |
研究代表者 |
猪爪 信夫 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (10191892)
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研究分担者 |
早川 達 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (50337044)
戸田 貴大 北海道薬科大学, 薬学部, 准教授 (00254706)
今田 愛也 北海道薬科大学, 薬学部, 准教授 (10557945)
福島 昭二 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (80248103)
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キーワード | 薬学 / 薬剤反応性 / 臨床 |
研究概要 |
1)リトドリンの母児間移行率を明らかにすることを目的とし、リトドリン投与された切迫早産治療双胎妊婦の帝王切開術施行時に採取した血液中のリトドリン濃度を測定するとともに、臍帯血中のリトドリン濃度を測定した。本研究は天使病院倫理委員会からの承認を受け、対象妊婦からは書面による同意を得た。対象妊婦のリトドリン投与期間は51±26日であり、リトドリン治療により分娩週数は35.7±1.4週とであった。リトドリン投与量と母体血中濃度において、切迫早産を抑制する濃度範囲で正の相関性が認められた。母体から双胎児へのリトドリン移行は、母体血中濃度の上昇に伴って直線的に上昇し、移行率は約1.1倍であった。この関係は、Grossらの単胎においての報告(y=0.88x+2.09,r=0.97)とほぼ同じ結果であった。出生体重が有意に重かった第1子のほうが第2子よりも、リトドリンの移行率が有意に低い結果が得られた。出生した双胎児に対しては、リトドリン体内動態を考慮して個別に対応することが必要な場合がある可能性が示唆された。今回検討した双胎妊婦から胎児へのリトドリンの移行率は症例により大きく異なり、母体血中リトドリン濃度の0.6~1.5倍のリトドリンが胎児へ移行していた。リトドリンは選択性の高いβ_2刺激作用を有しているが、弱いながらもβ_1刺激作用を併せ持つため、新生児の低血糖やイレウス、胎児の心拡大など重篤な副作用を引き起こすことがある。今回の検討では、個人差の大きな血中リトドリン濃度推移が示されたため、出生後はリトドリン由来の副作用発現に関して、新生児への個別対応の必要性が示唆される。今後、さらに症例を重ね、新生児への副作用を早期発見する方法を検討する必要がある。 2)ラセミ体リトドリンのHPLCを用いた測定法の感度向上を目的として、安定同位体標識リトドリンを特注合成し、LC-MSを用いた測定方法を開発した。この方法は微量血液からの測定が可能であり、2011年の臨床薬理学会で発表予定である。また、HPLCを用いた直接光学分割測定方法についても報告済みであるが、新生児の体内動態を検討するには微量の血液試料からの測定が必要であり、LC-MS(-MS)を用いた測定法を構築する必要がある。これまでのHPLC用測定法に用いる溶媒は不揮発性であり、質量分析することができないため、各種直製光学分割カラムと揮発性溶媒との組み合わせを検討し、Chiralcel-OJ-H(ダイセル化学)とヘキサン、エタノール、ジエチルアミンの混合溶媒系により、完全光学分割が可能であることを見いだし、血液試料の測定への応用法を検討中である。
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