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2011 年度 実績報告書

抗がん剤副作用発現の組織特異的な分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22590143
研究機関昭和大学

研究代表者

沼沢 聡  昭和大学, 薬学部, 准教授 (80180686)

キーワード5-フルオロウラシル / 骨髄毒性 / 酸化ストレス / Nrf2
研究概要

本申請研究では、固形がんの治療において最も広範に用いられている5-フルオロウラシルに焦点を絞り、特に治療の用量規定因子や患者QOL維持において重要となる副作用である骨髄抑制や口内炎の発症と酸化ストレスの因果関係を分子レベルで明らかにすることを目的とした。さらに、正常組織と腫瘍組織の5-FUに対する応答性の差異を生じさせる中心的分子を特定することにより、副作用発現に特異的に関わる機序の解明を目指した。本申請研究により副作用を克服するための分子基盤が構築されれば、新規支持療法等の開発などがん治療戦略に大きなインパクトをもたらすことが期待できる。本年度は、5-FUのp53に対する作用をin vivoで解析した昨年までの研究を進めた。5-FUは骨髄と移植癌組織のいずれにおいてもp53タンパクのリン酸化を誘導するが、その用量依存性は大きく異なり、腫瘍組織では線形的な応答を示すのに対し、骨髄では非線形の応答性が認められた。従って、p53応答性の相違が5-FU毒性の臓器選択性と関連する可能性が示唆された。一方、5-FUの骨髄毒性に酸化ストレスが関与する可能性に関して、本年度は抗酸化ストレスタンパクの転写を正に調節する転写因子Nrf2の阻害タンパクKeap1の遺伝子改変動物より得たMEF細胞を用いて、Nrf2高発現が5-FUの細胞毒性を保護するかについて検討を行った。5-FUはMEF細胞に対してcytostaticな増殖抑制作用を示したが、Keap1ノックアウト細胞においてもほぼ同様な抑制作用が認められた。従って、少なくとも繊維芽細胞においては5-FUの細胞増殖抑制作用にNrf2の関与は少ないことが明らかになった。今後、5-FUの骨髄毒性におけるNrf2の役割をNrf2遺伝子改変動物を用いて検討する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでの2年間の研究期間において、5-フルオロウラシルの骨髄毒性に酸化ストレスが関与していることは明らかにすることができたが、骨髄特異的に毒性が生じる分子メカニズムを特定するに至っていない。p53に着目して検討を重ねているものの、p53と酸化ストレスの関連性に関して、直接的な因果関係を明らかにしておらず、当初の計画から遅れていると言わざるを得ない。その理由として、学部制度の変更により大学院生が激減したことや、当初想定していた研究エフォートが確保できなかったことなどが挙げられる。

今後の研究の推進方策

今年度は5-フルオロウラシルの骨髄特異的毒性発現と酸化ストレスの関連性について、特にp53とNrf2あるいはBach1などの酸化ストレス応答性転写因子との相互作用の観点から検討を進める。マンパワー不足が研究遂行を遅れさせた理由となった点を考慮し、今年度は学部学生の本研究への参加を積極的に促す。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Auranofin protects against cocaine-induced hepatic injury through induction of heme oxygenase-12011

    • 著者名/発表者名
      Ashino T, Sugiuchi J, Uehara J, Naito-Yamamoto Y, Kenmotsu S, Iwakura Y, Shioda S, Numazawa S, Yoshida T
    • 雑誌名

      J Toxicol Sci

      巻: 36 ページ: 635-643

    • URL

      http://dx.doi.org/10.2131/jts.36.635

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Possible involvement of oxidative stress in 5-fluorouracil-mediated myelosuppression in mice2011

    • 著者名/発表者名
      Numazawa S, Sugihara K, Miyake S, Tomiyama H, Hida A, Hatsuno M, Yamamoto M, Yoshida T
    • 雑誌名

      Basic Clin Pharmacol Toxicol

      巻: 108 ページ: 40-45

    • DOI

      DOI:10.1111/j.1742-7843.2010.00621.x.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Involvement of interleukin-1 in lipopolysaccaride-induced microglial activation and learning and memory deficits2011

    • 著者名/発表者名
      Tanaka S, Kondo H, Kanda K, Ashino T, Nakamachi T, Sekikawa K, Iwakura Y, Shioda S, Numazawa S, Yoshida T
    • 雑誌名

      J Neurosci Res

      巻: 89 ページ: 506-514

    • DOI

      doi:10.1002/jnr.22582

    • 査読あり
  • [学会発表] SELEX法による乱用薬3,4-methylenedioxyamphetamine (MDA)結合アプタマーの作成2012

    • 著者名/発表者名
      諏訪雅子, 沼澤聡, 吉田武美
    • 学会等名
      日本薬学会第132年会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2012-03-31
  • [学会発表] オーラのフィンによるヘムオキシゲナーゼ-1誘導を介したコカイン誘発肝障害防御作用2012

    • 著者名/発表者名
      芦野隆, 上原淳奈, 杉内仁子, 岩倉洋一郎, 塩田清二, 沼澤聡, 吉田武美
    • 学会等名
      日本薬学会第132年会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2012-03-30
  • [学会発表] 炎症誘発パーキンソン病モデルマウスの作成とIL-1の重要性2012

    • 著者名/発表者名
      田中佐知子, 石井敦子, 大滝博和, 塩田清二, 吉田武美, 沼沢聡
    • 学会等名
      日本薬学会第132年会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2012-03-30
  • [学会発表] フェノバルビタールによるmiR-122ダウンレギュレーションを介したCYP2B誘導機構2011

    • 著者名/発表者名
      志津怜太, 沼澤聡、吉田武美
    • 学会等名
      第38回日本トキシコロジー学会学術年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20110700
  • [学会発表] ニコチン脳室内投与によるマウス海馬における神経毒性発現に関連するmiRNAの変動2011

    • 著者名/発表者名
      瀧憲二, 丸茂瑠佳, 芦野隆, 田中佐知子,沼澤聡, 吉田武美
    • 学会等名
      第38回日本トキシコロジー学会学術年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20110700
  • [学会発表] 大腸菌内毒素リポポリサッカライドを用いたパーキンソン病モデル動物の作成と神経変性機序におけるIL-1βの役割2011

    • 著者名/発表者名
      田中佐知子, 石井敦子, 大滝博和, 塩田清二, 沼澤聡, 吉田武美
    • 学会等名
      第38回日本トキシコロジー学会学術年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2011-07-12

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公開日: 2013-06-26  

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