研究概要 |
本研究課題の目的は「ヒト血液脳関門のin vitroモデル細胞(hCMED/D3細胞)を用いて、カチオン性中枢治療薬の血液脳関門透過機構を解明し、ヒトにおける脳移行性予測法を確立する」ことである。本年度は、1)D3細胞におけるカチオントランスポーターの発現を定量的PCRおよびRNAiライブラリー法を用いて明らかにすること、2)カチオン性薬物のin vivoにおける血液脳関門透過クリアランスをラット脳灌流法及び脳マイクロダイアリシス法を用いて測定することであった。 1)319種類のSCLトランスポーターのうち、有機カチオンの輸送に関与すると考えられる35種のトランスポーターのRNAiライブラリーを構築した。蛍光標識siRNAを用いた検討から、lipofectamine RNAiMAXを用いることによりRNAiをD3細胞へ充分に導入できることがわかった。昨年度の研究結果からhCMED/D3細胞において発現量が高かったOCTN1,0CTN2,PMAT,CTL1,CTL2についてsiRNA導入による遺伝子発現抑制効率を検討した。その結果、これらトランスポーター遺伝子の発現は約85-90%まで抑制されることがわかった。これらの結果から、ヒト血液脳関門のin vitroモデルであるhCMED/D3にはOCTN1,0CTN2,PMAT,CTL1,CTL2が多く発現しており、カチオン性薬物の輸送に関連している可能性が示唆された。 2)カチオン性薬物のうち、生理的pHでカチオン化しているオキシコドン、ピリラミン、ジフェンヒドラミンおよびオランザピンについてin vivoにおける血液脳関門透過クリアランス並びに脳への移行機構を検討した結果、これらの薬物の脳細胞間液中遊離形濃度は血漿中遊離形濃度より高く、比較的速やかに脳内に移行していることがわかった。以上から、これらカチオン性薬物は能動的輸送機構で脳内に移行していることがわかった。
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