細菌由来スーパー抗原やT細胞マイトゲンで刺激したヒト末梢血単核細胞(PBMC)の増殖や制御性T細胞(Treg)動態に及ぼす、種々の脂溶性ビタミンあるいは抗癌薬の効果を検討した。前年度までに、ヒ素化合物のAs2O3がTreg細胞の割合を有意に増加させることを示した。当該年度は主に、ビタミンK誘導体であるVK3とVK5、ならびに抗癌薬のダカルバジン、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシルが、細菌由来スーパー抗原やT細胞マイトゲンで刺激した健常者PBMC中のTreg細胞の割合に及ぼす影響について詳細に検討した。 Treg細胞は、PBMCのリンパ球画分を分画後、CD4+細胞中のCD25+Foxp3+T細胞の割合を算出することにより検討した。 その結果、VK3およびVK5は、10および100μMの濃度で有意に健常者PBMCからの TNF-α、IL-10、IL-6、IL-4の産生を抑制した。VK3は、薬物濃度が10および100μMのとき、CD4陽性細胞率およびTreg細胞率を有意に増加させた(p<0.001)。またVK5は、薬物濃度が10および100μMのとき、CD4陽性細胞率、CD25細胞陽性率、およびTreg細胞率を有意に増加させた(p<0.001)。一方、ダカルバジン、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシルは1ー10μMの濃度でTreg細胞率を有意に増加させた(p<0.05)。 抗癌薬は、Treg細胞率を増加させる効果を示すもののPBMCに対して細胞毒性を示すため、免疫抑制薬として使用することはできない。一方VK3およびVK5は、細胞毒性が比較的少なく、細菌由来スーパー抗原やT細胞マイトゲンで刺激したヒトPBMCの活性化を抑え、Treg細胞率を増加させることにより免疫抑制作用を示す可能性を提示した。
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