細菌由来スーパー抗原で刺激したヒト末梢血単核細胞(PBMC)では IL-2 産生量が持続的に亢進しており、その背景には mitogen-activated protein kinase(MAPK)の異常な活性化が関与している。しかしこのような異常と PBMC における制御性 T 細胞(Treg 細胞)動態との関連は明らかではない。免疫系の異常な活性化に伴う Treg 細胞の変動や、免疫抑制薬治療抵抗性の背景を明らかとすることにより、免疫抑制薬の効果が出にくい患者に対する新たな治療法の開発に有意義な示唆を与えるものと考えられる。そこで本研究は、スーパー抗原刺激した健常者PBMC における T reg 細胞の解析、およびこれらの細胞に及ぼす種々の薬物の効果を検討した。細菌由来スーパー抗原やT 細胞マイトゲンで刺激したPBMC では、Treg細胞率が増加した。そこで次に、同実験系における種々の抗菌薬、亜ヒ酸(As_2 O_3)、抗腫瘍薬、あるいは脂溶性ビタミンの効果を検討した。As_2 O_3や各種抗腫瘍薬がPBMC 中の T reg 細胞率を増加させることを明らかとした。一方ロキシスロマイシンは、T reg細胞の比率を変えずに JNK の活性を抑制してPBMC増殖を抑えるものと思われた。また、脂溶性ビタミンのうち、ビタミン K3とK5が、PBMC 中の Treg 細胞の割合を顕著に増加させることを示した。さらに、SLE 患者の PBMC の免疫抑制薬感受性とTreg 細胞動態についても、関連を見出した。細菌由来スーパー抗原や T 細胞マイトゲンで刺激した PBMCには Treg 細胞が減少しており、As_2 O_3 やビタミン K3とK_5 には、Treg 細胞率を増加させて過剰な免疫反応を抑える作用があることを示唆した。
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