研究課題/領域番号 |
22590152
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
倉田 洋子 金城学院大学, 薬学部, 助教 (80513928)
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研究分担者 |
小林 孝彰 名古屋大学, 医学(系)研究科, 寄附講座教授 (70314010)
葛谷 孝文 名古屋大学, 医学部附属病院, 副部長 (00444406)
網岡 克雄 金城学院大学, 薬学部, 教授 (50387594)
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キーワード | B細胞 / 薬力学解析 / 免疫抑制薬 / 感受性試験 / 免疫機能モニタリング |
研究概要 |
今年度は平成22年度で検討したB細胞薬力学的(PD)解析法を用いて、臨床で多く服用されている免疫抑制薬シクロスポリンA(CSA)のB細胞への効果と個人差について検討を行った。同時に、これまでに我々が確立したT細胞解析法(Kurata Y et al., Clin. Pharmacol. Ther. 2009; 86: 285-289)を用いて、T細胞に対するCSAの影響と個人差を評価し、B細胞のそれらとの比較を行った。B細胞の増殖には抗IgM抗体、T細胞の増殖にはphytohemagglutinin-P(PHA)を用いた。T細胞を特異的に増殖させる抗CD3/CD28抗体やT細胞の補助刺激の1つであるCD40リガンドにより増殖させたB細胞に対するCSAの効果についても評価した。免疫抑制薬の効果は50%抑制濃度(IC50値)および高濃度添加時の最小増殖率を指標とした。健常成人3名において検討した結果、各刺激により増殖したB細胞およびT細胞は、いずれもCSA濃度依存的に増殖抑制効果が認められた。B細胞から算出したIC50値および最小増殖率は、T細胞のそれらの値よりも低値を示したことから、よりCSAに対する感受性が高く、個人差が小さいことが明らかとなった。同様に生体腎移植手術施行予定患者10名で検討したところ、健常成人と同様の結果が得られた。また、T細胞の補助刺激であるCD40リガンドによるB細胞の増殖は、CSAの影響を受けなかったことから、T細胞を特異的に増殖させる抗CD3/CD28抗体にて増殖させたB細胞に対する作用ではなく、T細胞の増殖抑制による効果であると考えられた。以上の結果から、B細胞の増殖機序の違いによりCSAの影響が異なることも示唆されたため、今後はこれを考慮した薬力学的解析を確立し、実際の患者血液を使ったretrospectiveな検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本年度までにB細胞における薬力学解析法の確立やその解析法を用いた免疫抑制薬の効果、個体間変動の解析までがほぼ完了している。したがって、次年度も当初計画してした通りに、患者の血液を用いたretrospectiveな検討へと進む予定であり、現在既にその準備にとりかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の計画通り、これまでに検討してきたB細胞の薬力学解析法を用いて、B細胞解析およびT細胞解析を組み合わせた、より厳密な薬効評価法の確立を目指す。来年度は特に実際の患者検体を用いての検討を進める。患者血液は共同研究施設である名古屋第二赤十字病院移植外科の全面的な協力が得られることが決定しているため、研究の遂行に支障はない。
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