研究課題/領域番号 |
22590153
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
矢野 義孝 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (60437241)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬学 / 薬物動態学 |
研究概要 |
医薬品開発において、特に臨床試験前にヒトにおける薬物動態、すなわち血中濃度推移を予測することは、第1相試験における開始用量(最低用量)の設定や血中濃度データのサンプリングデザインの設定に有用である。薬物動態の予測については生理学的モデルを用いた方法など多くの手法が提案され、実用化されているものがあるが、本研究ではルーチンの医薬品開発業務で得られる限られたデータを最大限に活用することに特徴がある。既に研究代表者らは薬物静注時の血中濃度予測について薬物の物性や非臨床薬物動態試験データを活用した手法を提案しているが、本研究では経口投与時の血中濃度予測への拡張を目指した検討を行っている。既に昨年度までに、約40種の薬物について非臨床薬物動態パラメータや代表的な物性パラメータ値を収集し、ヒト経口投与時の薬物動態パラメータとの相関性を検討し、特にヒトCmaxを予測するための回帰式を得ている。 ヒト経口投与時の血中濃度を予測する手順として、コンボリューションを応用した手法を考案している。即ち、ヒトにおける静注時の推移を重み関数として用い、経口投与過程を表す関数を設定しこれを入力関数とする。昨年度実施したシミュレーションによる検討では、入力関数として簡単な指数関数、連続コンパートメントモデル、拡散モデルを考慮した。今年度さらに実際のデータを用いて予測性を検討したところ、簡単な指数関数を用いて予測することが現実的であることがわかり、収集した41種のデータを内部バリデーションデータセットとして用いて検討し、動物データからの回帰分析によるCmaxの予測性とヒトCmaxの予測精度との関連性を系統的に評価した。以上の結果の一部は論文投稿を行っているがまだ公表には至っていない。 なお、本研究に付随して、研究協力者である企業研究者との間でPK/PDモデリングに関する解析研究を行い、その成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体の方針や必要な解析プログラムは既に構築済みであり、シミュレーションによる検討や実際の文献値データを用いた系統的評価を進行中であるが、成果の一部、特にシミュレーションによる検討については論文公表には至っておらず迅速に進める必要がある。さらに予測区間の描画といった予測性の評価手法となるシミュレーション研究、解析システムのパッケージ化を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
特に予測誤差を考慮した上での手法を構築し、非臨床試験成績からのヒト薬物動態パラメータの予測誤差を反映した、ヒト血中濃度予測区間の描画や予測精度評価のための手法(predictive check)の手法の導入を図る。また、採血デザインの影響についても検討を加える。
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