研究概要 |
Wistar 系雄性ラットより小腸組織を摘出し、亜鉛の小腸粘膜透過性を測定した。小腸各セグメントの透過係数は亜鉛濃度の増大とともに低下し、飽和性を示した。担体介在性輸送と受動輸送の両者を仮定して、速度論解析を行った結果、担体介在性輸送に関するミカエリス定数は約10.0 mM、受動輸送に関する透過係数は約2.5×10-6 cm/sec であり、大きな部位差は観察されなかった。一方、最大輸送速度は十二指腸、回腸で約40 pmol/min/cm2、空腸で約30 pmol/min/cm2で、空腸における担体輸送活性が低いことが明らかとなった。次に、小腸各セグメントにおける各輸送担体および結合タンパクの mRNA 発現量を測定し、最大輸送速度との関係を定量的に評価した。ZIP4, ZIP5, ZnT1のmRNA発現量と最大輸送速度との間には特定の関係は認められなかった。特定の担体が亜鉛の小腸吸収に対して大きく寄与しているわけではなく、これらの輸送担体が協奏的に機能している可能性が示唆された、一方、MT2に関しては、発現が高い部位で最大輸送速度が小さい傾向が観察され、亜鉛の消化管吸収に対して、MT2が何らかの役割を持つ可能性が示唆された。次に、ラットに亜鉛を投与して亜鉛関連タンパク質の発現量の変動を試みた。まず、亜鉛をラットに皮下投与したところ、輸送担体の発現変動は顕著ではなく、対照的に結合タンパクの変動が大きかった。したがって、亜鉛の投与経路によって発現が変動するタンパクが異なる可能性が示唆された。
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