研究課題/領域番号 |
22590155
|
研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
山本 昌 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (00166779)
|
研究分担者 |
勝見 英正 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (30434666)
|
キーワード | 薬学 / マイクロニードル / インクレチン / 経皮吸収 / 吸収改善 |
研究概要 |
本研究では、インクレチンのうち、GLP-1のアナログであるExenatide(Exendin-4)を選択し、Exendin-4を封入した生体分解性マイクロニードルを調製し、本マイクロニードルをラット皮膚に適用後の有効性について検討した。なお、本研究では長さが800μm、base部分の直径が160μm、マイクロニードル先端部の直径が40μmのマイクロニードルを用いた。まず、Exendin-4をマイクロニードルに封入する際に、3種類の含有量の異なるマイクロニードルを調製したところ、マイクロニードル1枚当たり1,2及び4μgのExendin-4を含有するマイクロニードルを調製することに成功した。また、Exendin-4の含有量のロット当たりの誤差などについて検討したところ、Exendin-4の含有量の誤差はいずれの含有量のマイクロニードルにおいても10%以下であり、ほぼ均一な薬物を含有するマイクロニードルが調製できることが確認された。次に、マイクロニードルからの薬物の放出性について、モデル薬物として平均分子量約4,000のfluorescein isothiocyanate-labelled dextran(FD4)を用いて検討したところ、本マイクロニードルからのFD4の放出はきわめて速やかであり、放出実験開始30秒で既にFD4の放出が始まり、また大部分のFD4は実験開始5分以内でマイクロニードルから放出されることが明らかとなった。さらに2型糖尿病のモデル動物であるGK/Slcラットを用いてExendin-4含有マイクロニードルの皮膚適用後の有効性について検討したところ、グルコース耐糖効果ならびにインスリン分泌の増大が観察され、その効果は皮下投与の場合とほぼ同等であることが認められた。したがって、Exendin-4含有マイクロニードルは、2型糖尿病治療の際にExendin-4の皮下投与に代わるきわめて有用な投与形態であることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、前年度のインスリン含有マイクロニードルを用いた基礎的な予備検討の結果を踏まえて、実際にインクレチンであるExendin-4を含有したマイクロニードルを調製し、その有用性について評価した。その結果、研究実績の概要に示したように、薬物含有量がほぼ均一なマイクロニードルを調整できたこと、マイクロニードルからの薬物の放出性がきわめて速やかであること、糖尿病モデルラットにおいてExendin-4含有マイクロニードルが皮下投与とほぼ同等の薬理効果を有することを実証でき、ほぼ期待通りの研究成果が得られた。さらに、研究成果は、学会発表3件ならびに図書1件に既に発表している。したがって、本研究課題の研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究において、Exendin-4含有マイクロニードルは、2型糖尿病治療の際にExendin-4の皮下投与に代わるきわめて有用な投与形態であることが確認できた。今後は、本マイクロニードル適用後の皮膚刺激性ならびに障害性などについて検討し、マイクロニードルの安全性を評価することにより、有効かつ安全性の高いインクレチンの新規経皮投与形態の開発の構築を進めていく予定である。
|