研究概要 |
【目的】第2世代抗精神病薬(SGA)投与により発症するメタボリックシンドローム(MS)の発症機序について、レプチンの役割に焦点を当てて解析を行う事とする。特に、SGAの中でもolanzapine(OLZ)は他の薬剤に比べてMS発症作用が強く、risperidone(RIS)はOLZより低いものの肥満の副作用が観察される。他方、近年開発されたaripiprazole(ARP)はMSをほとんど発症しないと報告されており、抗精神病薬の違いによるMS発症の違いについても機序の解析を行う。 【結果】本年度は、in vitroのモデルとして肝癌由来株HepG2, 脂肪前駆細胞3T3L1, 神経細胞種Neuro-2aおよびPC12細胞を用い、各抗精神病薬で処理した場合の細胞への影響および脂質関連遺伝子の発現状況を検討した。 1.脂肪前駆細胞株3T3L1に各SGAsを添加したところ、OLZ処理群で、脂肪細胞分化時に著明な脂質蓄積量の亢進が認められた。脂質蓄積量の差異はOLZ>RIS>ARPの順であった。 PPARγの細胞内局在を抗体染色により観察したところ、薬物添加1時間後では全ての薬物でPPARγタンパク量の上昇が認められた。さらに、24時間後ではOLZ群のみでPPARγの持続的な増加が観察され、抗精神病薬であるOLZが直接的に脂肪細胞分化を促進することを見いだした。 2. 運動神経系細胞株であるNeuro-2aよりも、交感神経細胞株であるPC12で、SGAsに対する反応性が高いことを認めた。特にセロトニン5-HT2受容体やヒスタミンH1受容体が各種SGAsで発現が増大することを認め、これらの脳内アミンを介して交感神経系を活性化して肥満を導く可能性を認めた。 以上のように、SGAsは脂肪細胞での脂質取り込みと交感神経系を活性化する相乗効果によって肥満を引き起こすことを明らかにした。
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