研究実績の概要 |
本研究課題は、感染症の罹患、あるいは免疫系アレルギー反応の原因となる免疫系シグナル伝達システムの活性化(賦活化)が、CYPに代表される肝薬物代謝酵素の発現・活性変動に、どのような影響を及ぼすかという、そのメカニズムの解明を目的としたものである。実験動物にはマウスを用い、リポポリサッカライド(LPS)投与により細菌感染を、オボアルブミン投与でアナフィラキシーショックを、それぞれ誘導・惹起する系を作成した。興味深いことに、CYP3A11の活性化はLPS投与系では起こるが、アナフィラキシーショック系では起こらない。このメカニズムを解明するために、作業仮説として、免疫系シグナル伝達経路の要であるNF-kappa Bと相互作用するたんぱく質性因子が存在しており、それが、NF-kappa Bの4つのsubunitのうちのp65 subunitと結合するので、転写が阻害される可能性を考えた。そこで、ショットガン法を使ったプロテオミクスを行い、未知因子の同定を試みた。 平成26年度までに、Bag6/Bat3とよばれている未知因子の同定に成功している。しかし、p65, bag6の各々を使った免疫沈降実験では、両者の結合を確認するところまでは至らなかった。この理由の有力な候補に、核内転写因子の結合を見ているため、両者の結合がかなり弱く、免疫沈降実験では検出できない可能性が考えられる。他にも、baitたんぱく質として用いたp65が不適切である可能性や、CYP系の代謝酵素の発現を左右する他の核内レセプターをbaitとする必要もあるかもしれない。この部分が、越えなければいけない課題として残っている。
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