研究課題
Interleukin(IL)-6関連サイトカインは心筋組織傷害後の修復・再生において重要な役割を演じているが、それらの多くは全身性に炎症反応を誘発することが知られており、臨床応用するのが難しいと考えられる。IL-6関連サイトカインの中のIL-11は、血小板減少症治療薬として米国で認可され、既に臨床応用されていることより、本研究では、IL-11の心不全発症予防薬としての臨床応用の可能性を検討するため、サイトカインによる心筋における内因性の保護・修復・再生機構を賦活化することによる新たな心不全発症予防戦略の確立を目的とし、心筋梗塞(MI)傷害モデルマウスにおけるIL-11の心保護効果について以下の方法で検討した。1.心機能評価:虚血・再灌流心筋傷害モデルマウスにおけるIL-11の効果についてランゲンドルフ灌流装置を用いて行った。MIモデル作製後、IL-11(3、8、20μg/kg)を投与し、2週および4週後の最大左心室圧(LVDP)を測定した。その結果、IL-11(8、20μg/kg)投与群ではコントロール群(PBS投与)に比べ有意にLVDPが改善した。2.組織学的評価:IL-11による心保護効果がSTAT3を介することを確認するため、心筋特異的タモキシフェン誘導型STAT3遺伝子改変(ノックアウト;KO)マウスを用いて検討した。モデルマウスおよび野生型マウスを用い、MI傷害後、IL-11投与を行い、2週間後に心臓摘出し、組織切片作製後、マッソントリクローム染色を行い、繊維化を顕微鏡下で確認した。その結果、心筋特異的STAT3 KOマウスのMI傷害は、野生型のMI傷害マウスに比べ心筋線維化領域の割合が有意に高かった。以上のことより、虚血心筋傷害後のIL-11の心保護効果はSTAT3を介した心筋線維化を抑制し、心機能改善に寄与する可能性が示唆された。
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Drug Metabolism and Disposition
巻: 39 ページ: 1-3