研究課題/領域番号 |
22590162
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
森 信博 広島国際大学, 薬学部, 准教授 (70412351)
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研究分担者 |
村上 照夫 広島国際大学, 薬学部, 教授 (20136055)
横大路 智治 広島大学, 大学院・医歯薬総合研究科, 助教 (70389120)
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キーワード | 医療薬剤学 / 妊娠 / 異物排出ポンプ / P-gp / Mrp2 |
研究概要 |
本研究は、妊婦や授乳中の女性における安全性の高い薬物療法を実施するための基礎的情報を得ることを目的として、妊娠及び授乳期ラットにおけるP-糖タンパク質(P-gp)関連化合物の体液中濃度の経日的な変動、及び母体内の各種異物排出ポンプの発現と機能への影響について解析し、さらに、ヒト妊婦における妊娠・授乳期間中の内因性P-gp関連化合物の尿中への分泌変動を経日的に測定し、母体内の異物排出ポンプ機能への影響を考察するものである。 本年度の研究実施計画は、「同意が得られ採取した妊婦(妊娠期および授乳期間)からの尿中に含まれるP-gpの基質となる内因性物質をヒトP-gp高発現LLC-GA5-Col-150細胞を用いて、その細胞膜の排出輸送能の阻害活性により評価する。また、妊娠及び授乳期ラットの肝臓中のP-gpやMrp2発現量の経日的な変動についてWestern Blot法により解析を行う」である。 妊婦尿中に含まれる内因性のP-gp関連化合物は、ヒトP-gp遺伝子を導入しP-gpを安定発現させたLLC-GA5-Col-150細胞を用いることにより精度良く評価でき、妊娠及び授乳期間中の早朝尿においてP-gp阻害活性が認められた(12検体中7検体)。そのうちの4検体ではverapamilに匹敵する強いP-gp阻害活性を示した。しかしながら、妊娠後期に上昇するステロイドホルモンの変動とP-gp阻害活性の強度との相関はみられなかった(投稿論文作成中)。 また、妊娠間中のラットにおける肝臓中のMrp2の発現量の経日的な変動についてWestern Blot法により解析したところ、妊娠初期から出産直前にわたりmrp2発現量に差は認められなかった。この結果は同じ動物系統を用いた海外論文データとは異なるものであった。mrp2発現が抑制した妊娠性胆汁うっ滞モデルラットを作成し評価する予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究課題の中で、妊娠から授乳期間中の妊婦尿に含まれる内因性P-gp関連化合物の検討については計画どおり終了したが、妊娠ラットを用いた検討で予想と異なる結果が得られた。そこで、妊娠性胆汁うっ滞モデルによる検討に計画を変更し、当初計画よりやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
妊婦尿中の内因性化合物の検討をP-gp(投稿論文作成中)に引き続きMrp2についても実施し、妊娠及び授乳期間中の妊婦における排出トランスポーターへの影響に関する基礎データを取得し、安全な薬物療法について考察する。また、妊娠(正常)ラットの検討からエチニルエストラジオールを腹腔内処置後の妊娠性胆汁うっ滞モデルラットによる検討に変更しP-gp及びmrp2基質となる薬物の体内動態の変動を明らかにすることにより、胆汁うっ滞を呈する妊婦における薬物療法について排出トランスポーター介在性の薬物相互作用の観点から考察する。
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