研究課題
血液脳関門の病変化は薬物の脳移行動態に密接に関連している。しかし、病変化を検出しうる生体での血液脳関門機能評価法はない。血液脳関門は循環血中の様々な生理活性物質(血液脳関門バイオマーカー)により正負の機能調節を受けている。バイオマーカーによる修飾を統合した表現型として血液脳関門が機能しているので、そのプロファイル法の開発が血液脳関門機能評価の有力な手段となりうる。本研究では、血液脳関門機能を修飾するバイオマーカーの網羅的解析を行い、データマイニング技術によって血液脳関門病態を検出可能なプロファイル法構築を目指す。本手法の開発は、血液脳関門病変化に基づく関連疾患発症・病期予測、治療設計・評価および薬物中枢性副作用予測を可能にし、それらに対する早期介入および治療適正化の実現を推進する。本年度は、(1)炎症病態下で増加する生理活性物質として、TNF-α、RANTES、oncostatin M、PAI-1、IL-6およびcyclophilin Aに着目し、これらの血液脳関門機能(密着結合性およびトランスポーター)に対する作用をin vitro BBBモデルを用いて検討した。その結果、血液脳関門機能は、TNF-α処置およびoncostatin M処置によって低下し、PAI-1処置によって亢進することを明らかにした。また、IL-6処置およびcyclophilin A処置は血液脳関門機能に影響を及ぼさなかった。(2)病態モデルとして、肝移植後初期の肝障害をシミュレートした部分肝切除肝障害モデルマウスを作製し、免疫抑制薬cyclosporine Aの脳内移行性および中枢毒性を検討した。その結果、急性肝障害時には血液脳関門のP-糖蛋白質機能および密着結合能の低下によってcyclosporine Aの脳内移行が増加し、その中枢毒性が増悪することを明らかにした。
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