研究概要 |
血液脳関門(BBB)の病変化は薬物の脳移行動態に密接に関連している。本研究は、循環血中の様々な生理活性物質濃度の変動を指標にBBB機能を修飾するBBBバイオマーカーを提案しようとするものである。 昨年度は、BBB機能調節細胞である脳ペリサイトが炎症刺激に応答してTNF-a, MCP-1, MIP-1, IL-6, GRO/KC, RANTESなどのサイトカイン・ケモカインを大量に産生すること、またこの産生能は脳内免疫担当細胞であるミクログリアよりも特段に高いことを明らかにした。そこで本年度は炎症刺激により脳ペリサイトから誘発される上記のケモカインのBBB機能への作用についてin vitro BBBモデルを用いて検討し、病態モデル動物での結果と併せてBBBバイオマーカーの抽出を試みた。TNF-aはBBB機能の障害因子であり、IL-6はBBB機能に影響しないことは既にin vitro BBBモデルにおいて明らかにしている。今回、RANTESがBBBモデルにおいて薬物の脳移行を支配するP糖タンパク質の機能を亢進することを初めて明らかにした。MCP-1, MIP-1, GRO/KCはBBB機能に影響しなかった。このことは炎症病態下において脳ペリサイトから誘発されるRANTESがBBB機能を修飾することを示唆する。一方、炎症誘発物質リポ多糖(LPS) を投与したマウスではBBB機能変化に伴い、循環血中のTNF-a, MCP-1, MIP-1,IL-6, RANTESが上昇する。これらのことからTNF-aに加え、RANTESは脳ペリサイトに起因したBBB機能変化を予測しうる「真の」BBBバイオマーカーとして有用である可能性がある。またMCP-1, MCP-1,IL-6自身は直接的にBBB機能には変化をもたらさないが、BBB機能変化を予測するサロゲートマーカーとなりうるかもしれない。
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