研究概要 |
本研究では,両親媒性b-CyDs(HP-b-CyD, HB-b-CyD)の包接機能とユニークな物性に基づいて,細長い分子構造を有する二型経口糖尿病治療薬グリメピリドをモデル薬物に選択し,誤嚥の回避や投与回数の低減など,利便性を高めた次世代型口腔内崩壊錠(ODTs)の開発を企図した.具体的には,極めて難水溶性で生物学的半減期が短いグリメピリド錠を直打法で調製し,口腔内で崩壊後,嚥下しやすく,分散粒子から主薬が徐々に放出するODTsを構築した.まず,b-CyDとグリメピリドの包接複合体形成を利用して,崩壊性,分散性,溶解性,バイオアベィラビリティなどに優れるODTs用基本処方を構築した.次に,ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のヒドロキシプロピル基の一部にステアリル基(C18)を導入したSangeloseを結合剤に用いて新規処方を構築した.Sangeloseのレオグラムは鎖状高分子構造に由来して準粘性流動(quasi-viscous flow)を示すが,CyDを添加するとステアリル基同士の疎水相互作用が減弱し,粘性が低下することを見いだした.そこでこの現象を利用して, CyDの空洞サイズや添加濃度,温度変化などに応じてSangeloseの粘性を変化させ,口腔内で崩壊したODTs分散物(bolus)の嚥下性改善に応用した.さらに,HP-b-CyDを含有するODTsが水に濡れると,錠剤の表面にゲル性の薄膜を形成し薬物放出を遅延すること,HB-b-CyD/グリメピリド複合体は安定度定数が大きく解離し難いことを利用して,徐放性製剤の処方を構築した.本研究の成果は、今後さらに,CyDを用いて経粘膜・経皮適用型DDS製剤における各種製剤特性(保湿性,分散性,粘弾性など)の改善に活用し,患者に優しいスーパージェネリック製剤の開発が進展するものと期待される.
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