研究課題/領域番号 |
22590165
|
研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
高村 徳人 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (20369169)
|
研究分担者 |
徳永 仁 九州保健福祉大学, 薬学部, 准教授 (60369171)
緒方 賢次 九州保健福祉大学, 薬学部, 講師 (90509580)
|
キーワード | ネフローゼ症候群 / 非侵襲的尿中診断法 / タンパク結合 / 尿中アルブミン / サイトプローブ / 遊離脂肪酸 / 疑似ネフローゼ症候群尿 |
研究概要 |
ネフローゼ症候群患者の場合、腎尿細管中に多量の血清タンパク質が漏れ出るため、タンパク結合性の高い薬物は腎尿細管中のヒト血清アルブミン(HSA)と主に結合し、尿細管中での薬理効果を発揮できない。したがって、腎尿細管内のHSA結合能の変化を推察するための非侵襲的尿中診断法の確立は重要である。本研究に関し以下の成果を得た。 1.尿中におけるHSA濃度の影響を明らかにするために、2人の健常人尿に濃度の異なるHSA(100~500μM)を加えてネフローゼ疑似尿(AおよびB)を調製し、それぞれの疑似尿にサイトプローブ(サイトI:ワルファリン、サイトII:イブプロフェン)を一定量添加して試料を調製し、サイトIおよびIIの結合能を評価した。その結果、疑似尿AとBにおけるHSAサイトIおよびIの結合能は、程度の差があるもののHSA濃度の増加と共に増強した。したがって、尿中に漏出するHSA濃度の差異は尿細管に存在する薬物のHSA結合能の強弱に反映される可能性が高い。 2.2人の健常人尿から調製したネフローゼ疑似尿におけるHSAのサイトIとIIの結合能に及ぼす尿中成分の影響を検討したところ、尿中成分で各結合サイトの結合能に関係する臨床検査値はクレアチニンと尿素窒素であり、特に、クレアチニンは尿素窒素より各結合サイトへの影響を正確に反映していた。さらに、蛋白結合を有する尿中の尿毒症物質(インドール酢酸:IA、インドキシル硫酸:IS、馬尿酸:HA、3-カルボキシ-4-メチル-5-プロピル-2-フランプロパン酸:CMPF)を測定したところ、ISやHAの濃度は高く、個人差も著しく大きかった。一方、IAやCMPF濃度は低く、個人差も小さかった。個々のサイトIIの結合能への影響の違いは尿毒症物質であるISやHAの濃度の違いに依存することが判明した。くわえて、尿中成分にはHSAの各結合サイトの結合能に影響するほどの遊離脂肪酸は含まれていないことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定可能な内因性物質のデータから、各結合サイトの結合能予測がある程度可能であることが判明したため(想定範囲内の結果を得ることができたため)。
|
今後の研究の推進方策 |
ネフローゼ患者の尿を採取できない場合には、尿細管中に分泌され利尿効果を発揮するHSA結合の強いフロセミドをモデル薬物として用いて、ネフローゼ疑似尿における結合阻害薬の影響を非侵襲的尿中診断法で捕らえることができるか検討を進める。
|