研究概要 |
1.FGFシグナルは脾臓形成にどのように作用するのか? 申請者は、FGFR1、2を介したシグナルが脾臓形成の何らかの過程を制御すると仮定している。この仮説を検証するため、前年度で得られた脾臓の遺伝子マーカーを用いて、FGFシグナルを活性化または抑制したときの発現変化を調べた。FGFR2の活性型または機能阻害型改変遺伝子は海外の研究者より提供を受けた。これらよりpCAGGS-FGFR2発現ベクターを構築し、孵卵2日目のニワトリ胚の予定脾臓形成域にin vivoエレクトロポレーションで導入した。孵卵4日目に胚を固定し、脾臓遺伝子マーカー(Hox11.Pod1,Barx1,Bapx1)の発現変動を検討した。その結果、機能阻害型FGFR2が導入された脾臓原基細胞では、Barx1の発現が抑制されることがわかった。 2.脾臓形成を制御するFGFリガンドは何か? 1.と並行して、FGFリガンド候補を探索した。FGFリガンドに対するPCRプライマーを設計し、4日目のニワトリ胚より作製したCDNAを用いてRT-PCRを行った結果、15種のFGF cDNAを得た。これらを用いてin situ hybridizationにより発現パターンを確認したところ、FGF16が脾臓領域に発現することを見出した。FGF16は3.5日胚より脾臓領域のmesotheliumに発現を開始し、8日目までに消失した。FGF16の発現期間は脾臓が腸管より膨出する時期に相当するため、脾臓原基の増殖にはmesotheliumがシグナル源となり、この増殖にはFGF16シグナルが関与する可能性が示唆された。
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