ゴルジ装置の構築は、その上流(粗面小胞体)や下流(細胞膜、リソソーム、分泌顆粒など)の細胞内小器官との間の膜輸送機構によって動的に維持されているが、生体における分化した細胞での詳細に関しては未だに不明の点が多い。そこで、本研究では、刺激と応答の関係が明快であるペプチド性内分泌細胞に着目して、そのゴルジ装置の微細構造や細胞骨格の構築の特殊性や実験内分泌学的処置によって生じる変化を解析している。 平成22年度には、まず下垂体前葉の性腺刺激ホルモン産生細胞のゴルジ装置の構築の特徴について免疫組織化学法および電子顕微鏡観察で解析し、その結果、同細胞のゴルジ装置が球形で、その外壁がシス側、内壁がトランス側であることを明らかにした。この球状のゴルジ装置の中心近傍にはγ-チュブリン陽性の中心小体が存在し、微小管はここを起点として細胞周辺部に向かって等方的に伸びていた。この所見は、内分泌細胞におけるゴルジ装置が、細胞極性の明瞭な外分泌細胞で見られるようなカップ状の構築ではなく、等方的な細胞骨格の構築を反映して高い対称性を有する球状の特異な構築をとることを意味しており、ゴルジ装置の極性に関しても、微小管の方向性やモーター蛋白の使い分けに関する従来の知見と良く合致する合理的なものであることが示唆された。この所見をもとに、さらに、去勢手術やLHRH誘導体持続投与で同細胞の機能状態を変化古せたラットから経時的に組織標本を作成し、この特異なゴルジ装置の構築や極性がどのように変化するか、現在解析を進めている。以上の研究成果の一部は、第88回日本生理学会大会/第116回日本解剖学会全国学術集会・合同大会(東日本大震災のため、J Physiological Sciences誌(61巻~Supplement 1、2011年)上での開催)で報告した。
|