研究課題/領域番号 |
22590185
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
渡部 剛 旭川医科大学, 医学部, 教授 (80220903)
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キーワード | ゴルジ装置 / 下垂体前葉 / 分泌顆粒形成 / 細胞内小胞輸送 / 性腺刺激ホルモン産生細胞 / 電子顕微鏡観察 / 免疫組織化学 / 実験内分泌学的動物モデル |
研究概要 |
ゴルジ装置の構築は、その上流(粗面小胞体)や下流(細胞膜や分泌穎粒など)の細胞内小器官との間の膜輸送機構によって動的に維持されているが、生体で分化した細胞での詳細に関しては未だに不明の点が多い。本研究では、平成22年度までに、下垂体前葉の性腺刺激ホルモン産生細胞のゴルジ装置が、内分泌細胞の細胞極性の乏しざを反映して、対称性の高い球状の構築を呈することを明らかにした。 この知見を踏まえて、さらに平成23年度には、去勢手術やGnRH誘導体持続投与で同細胞の機能状態を変化させ、この特異なゴルジ装置の構築や極性がどのように変化するか解析した。その結果、同細胞のGnRH受容体に強い刺激が加わると球状に統合されたゴルジ装置の構築が一過性に乱れることが明らかになり、同受容体下流の情報伝達経路の活性化が誘因となってGRASP55/65などゴルジ装置の構築維持に関わる分子のリン酸化修飾が生じる可能性が示唆された。このような実験内分泌学的動物モデルの解析と並行して、内分泌細胞由来の培養細胞株AtT-20細胞で分泌顆粒形成に重要な役割を果たすセクレトグラニンIII(sgIII)の発現をsiRNA法でノックダウンした際に生じるゴルジ装置の微細構造変化を解析したところ、TGNが著明に空胞化する所見を得た。この所見は、ゴルジ装置の構築維持にもSgIIIが重要な役割を果たしていることを示唆しており、同分子によるTGNへのコレステロール集積機能を視野に入れて、その分子細胞生物学的背景を解析しているところである。 以上の研究成果のうち、去勢手術やLHRH誘導体持続投与によるゴルジ装置の構築の変化に関しては第117回日本解剖学会全国学術集会で、AtT20細胞でグラニン蛋白をノックダウンした時のゴルジ装置の変化に関しては第57回日本解剖学会東北北海道連合支部学術集会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的に記載した「内分泌細胞のゴルジ装置構築の特徴の解明」に関しては、性腺刺激ホルモン産生細胞の詳細な観察から新知見を得て、その知見について日本解剖学会の学術集会で発表するとともに、原著論文を下記の国際学術誌に投稿した。また、同細胞の機能状態をGnRH誘導体持続投与や去勢手術で変化させた際のゴルジ装置構築の変化や、siRNAを用いて培養細胞における分泌顆粒構成蛋白の発現を抑制した際のゴルジ装置の微細構造変化についても既に所見を得ており、学会で報告するとともに現在原著論文をまとめている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得た生理的な状態での性腺刺激ホルモン産生細胞のゴルジ装置の構築の特性を踏まえて、今後は同細胞で微小管が破壊された時にゴルジ装置がどのように変化するかについてさらに所見を積み重ねて、微小管構築がゴルジ装置の大局的構築の確立に果たしている役割を解明していく予定である。 また、実験内分泌学的な刺激が加わった際のゴルジ装置の微細構造変化に関しては、性腺刺激ホルモン産生細胞以外の細胞種を標的として特異的な刺激を加えた動物モデルの下垂体組織標本も既に作製してあるので、今後はこの材料を用いて解析を進め、異なる内分泌細胞間で知見を比較することで、各細胞固有の細胞内情報伝達経路とゴルジ装置の構築維持機構の関連性について理解を深めていく計画である。
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