研究概要 |
マウス小腸パイエル板M細胞におけるepidermal fatty acid binding protein(E-FABP:上皮型脂肪酸結合タンパク)免疫陽性反応は腸管腔に接する領域で特に強い(Suzuki,2009)。平成22年度の研究ではM細胞におけるE-EABP発現と抗原取り込みとの相関が観られたことを考えるとM細胞腸管腔側でのE-FABP強陽性は抗原取り込み機構の一部を形成すると予想された。 しかし、E-FABPのアミノ酸配列内にはこの局在を説明できるシグナル配列は存在しないので共役するタンパク質が必要なはずである。 1.剖出したパイエル板を30mM EDTA/PBS、37℃中で振とうすることで、上清中に上皮を分離できる。上皮と上皮化の組織それぞれから組織懸濁液を作製し、それぞれに対してE-FABP抗体を用いた免疫沈降を行った。上皮由来の検体にのみみられるバンドを切り出して質量分析で同定を試みた。解析サンプルのうち比較的上皮特異性があるものは、End A cytokeratin, cytokeratin 19,Galectin4であった。 2.End A cytokeratin, cytokeratin 19,Galectin4とE-FABPとの共存をそれぞれに対する特異抗体を用いた2重染色で確認した。cytokeratin 19,Galectin4はM細胞の管腔側E-EABP強陽性部位によく一致して局在し、また、染色強度もE-FABPのそれとよく相関した。Galectin4については、M細胞直下のE-FABP陽性樹状細胞にも発現が見られた。Cytokeratin19,Galectin4とE-FABPとの2:重染色所見は1.の結果と合致し、また、冒頭で述べたM細胞におけるE-FABPの共役タンパク質としての条件存満たした.
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今後の研究の推進方策 |
In vivoでM細胞におけるE-EABPとGalcetin4,あるいはCytokeratin19との複合体が抗原取り込み機構の一部をなすことが示唆された。今後caco-2細胞を用いたin vitroの系で以下の実験を行う。 1.E-EABPとGalcetin4,あるいはCytokeratin19それぞれをtag付タンパク質としてcaco-2に共発現させ、共沈するかを確認し、E-FABPと直接結合することを確認する。 2.Caco-2にE-EABP単独、E-EABPとGalcetin4,あるいはCytokeratin19を共発現したときにin vivoで確認できたとの同様な抗原取り込みの亢進が観察されるか確認する。 3.E-FABP陽性M細胞の直下にはE-FABP陽性樹状細胞が集塊をつくる傾向があり、E-FABP陽性M細胞から樹状細胞遊走因子が分泌されていることが考えられる。2.の共発現系に抗原を負荷したときの培地を回収し、C57BL/6の腸管壁に注入し、樹状細胞が集塊を作るか確認する。また、抗原負荷前後のそれぞれの細胞懸濁液からそれぞれmRNA溶液を調整、Clontech PCR-Select^<TM> subtraction kitを用いてE-FABP陽性細胞で特異的1に発現が高い分子をスクリーニングすることで樹状細胞遊走因子の同定を試みる
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