本研究の目的は、骨髄由来細胞や血球によって制御されることが示唆されている、血管からのリンパ管の分離、あるいは分離状態の維持が、どのような血球によって、またどのような内皮細胞の変化によって成立するのかを明らかにすることである。具体的には、1)リンパ管内皮細胞をEGFPで標識したリンパ管可視化マウス(Vegfr3-GFPノックインマウス)を利用して、正常発生および血管・リンパ管の分離異常が引き起こされる環境下でのリンパ管の挙動を解析する。2)その挙動を決定づける細胞の種類を同定するために、マウスPlcg2遺伝子の時期・組織特異的遺伝子改変を、Cre/loxPシステムを利用して実施し、リンパ管の挙動変化を引き起こすCreドライバーマウスを見出す。平成22年度においては、以下の研究を実施した。1)蛍光実体顕微鏡および画像処理ソフトウェアを利用したVegfr3-GFPノックインマウス観察の予備実験を進め、胎仔および成体のリンパ管の立体的把握が可能であることを確認した。また、Vegfr3-GFPノックイン・アリルを利用した、Plcg2遺伝子変異マウスの異常なリンパ管網の可視化および骨髄細胞に由来する血管・リンパ管内皮細胞の存在、挙動に関する検討するための、マウスの交配を進めた。2)Cre/loxP組換えによってPLCγ2の発現を制御できる遺伝子改変マウスの作成を完了した。また、当該マウス系統と複数のCreドライバーマウスを利用した組織特異的PLCγ2の発現誘導によって、正常な血管・リンパ管形成に寄与する細胞の種類を絞りこむことに成功した。
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