研究課題/領域番号 |
22590196
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
前田 誠司 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10309445)
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研究分担者 |
早川 徹 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10098543)
大谷 佐知 (桑原 佐知) 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (40412001)
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キーワード | 腎臓 / アセチルコリン / ネフロン / 神経 / ムスカリン受容体 / 腎上皮細胞 / 尿細管 / 集合管 |
研究概要 |
本年度は主にACh産生細胞の同定をACh合成酵素であるcholine acetyltransferase(ChAT)の組織内分布と細胞内局在を調べた。ChAT陽性細胞は皮質集合管主細胞に分布していたが、これは副交感神経節後ニューロンがほとんど認められない腎臓においてAChの供給源となりうることを示唆している。しかしながら、その発現細胞数は全腎集合管主細胞の15%程度であり、髄質集合管ではほとんど認められなかった。このことから、腎臓の非神経性AChの産生はネフロンで偏りがみられ、恐らく局所的な作用経路をもつと考えられる。さらに、集合管主細胞におけるChATの局在は管腔側膜にみられたことから、集合管腔にAChが放出される可能性が考えられた。 AChの受け手であるムスカリンACh受容体(mAChRs)の発現の検討を行った。ラット腎上皮系細胞株NRK-52E細胞には恒常的にmAChRサブタイプのM1RとM4Rが発現していた。ACha gonistであるcarbacol刺激によりNRK-52E細胞にATP感受性K+チャンネル(Kir6.1)が発現することが分かった。Antagonistによる受容体阻害実験により、Kir6.1はM4Rの活性化によって発現調節されていることが明らかとなった。また、同一リガンドに対する競合的な複数の受容体サブタイプがネフロンに存在することは、AChの作用がより複雑に制御されていることを示唆する。また、ラット腎組織でのM4Rの局在は、近位尿細管および集合管管腔側に認められた。受容体発現がネフロン管腔側膜にみられたことは、AChの作用経路として集合管管腔が利用されている可能性を状況的に裏付けるものである。 神経トレーサーを用いた迷走神経投射ニューロンの検索では、腎臓への明確な線維は確認できなかった。恐らく分布神経はほとんど存在しないか、極めて少ないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎臓における非神経性AChの分泌を皮質集合管主細胞が担っていることを明らかにした。また、これまで考えられていなかった、ネフロン管腔を経由するACh作用経路の可能性を示唆することができた。
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今後の研究の推進方策 |
腎臓におけるAChの動態をさらに詳細に検討する必要がある。すなわち、(1)これまで見つかったACh産生領域以外ではAChの供給はどのように行われているのかという点、そして(2)新たに明らかになった腎上皮細胞における複数のmAChRサブタイプの発現とカリウムチャンネルの制御について検討していく必要がある。 また、コリン作動性ニューロンの投射の可能性については、これまでの研究ではネガティブな結果が得られるのみであったため、過去の文献に照らしてもその存在は否定的にならざるを得ない。よって、最終年度の研究自体は上記の非神経性ACh細胞の解析に比重をおくことになるだろう。
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