研究課題/領域番号 |
22590202
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
橋井 美奈子 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 協力研究員 (10272957)
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研究分担者 |
松川 茂 福井大学, ライフサイエンス支援センター, 准教授 (00092809)
樋口 善博 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (10019630)
東田 陽博 金沢大学, 医学系, 教授 (30093066)
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キーワード | CD38 / サイクリックADPリボース / カルシウムイオン / 結合蛋白 / リン酸化 / エピトーグタグ / 免疫沈降 / プロテオミクス |
研究概要 |
リンパ球表面抗原CDファミリーの一つであるCD38には、細胞内Ca^<2+>上昇に働くセカンドメッセンジャー、サイクリックADPリボース(cADPR)を合成する酵素としての働きがある。質量分析実験よりCD38結合蛋白としてプロテインキナーゼ(PKと略)が候補として得られたので、CD38がPKのどのアイソフォームと結合するかを免疫沈降実験により確認し、さらにCD38がPKとの結合することによりどのような生理作用を発揮するのかを検討した。 方法として、今年度はC末にflag配列を付加したPK(isoform)cDNAを得、CD38cDNAと共にHEK細胞に発現させた。ついでこの細胞よりライゼートをとり、flag抗体を用いて免疫沈降、免疫沈降タン白を溶出し、タグ抗体でウエスタンブロットを行った。その結果、CD38の高さに一致する部位にバンドが得られ、CD38がPKアイソフォームと特異的に結合していることを確認し、両者の結合が想定された。さらに、CD38依存性細胞内カルシウム反応についてもPKの関与が見られた。 CD38を活性化する上流シグナル、すなわちCD38蛋白がどの蛋白キナーゼによるリン酸化を受けるかについては依然として不明であり、その理由の一つは、CD38蛋白に特異的な抗体がないためと考えられてきた。エピトーグタグおよびタグ特異的抗体を用いた結合蛋白の解析により、CD38蛋白がどのキナーゼ、どのアイソフォームによるリン酸化を受けるかについて明らかにできると考えられる。 CD38は急性リンパ性白血病(CLL)、HIV等の予後マーカーとして臨床で使われており、また糖尿病におけるCD38自己抗体、自閉症におけるポリモルフィズムも予想されており、がん治療の標的としても期待されている。CD38の活性化機構を調べる本結果は、これら疾患の病因解明や治療戦略に将来的に役立つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CD38がどのPKのアイソフォームと結合するかの確認をCD38側のCD38タンパクの免疫沈降実験とPKタンパクの免疫沈降実験の両方にて確認し、CD38がPKと結合することにより生理作用を発揮することを細胞内カルシウム濃度測定により調べた。
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今後の研究の推進方策 |
PKはCD38の特定部位をリン酸化するかについてのin vitroリン酸化アッセイと生理機能の検討を予定している。PKリン酸化に特異的なコンセンサス配列情報よりGST融合蛋白をCD38(細胞内部位)、リン酸化部位変異CD38、活性型PKそれぞれ作り、in vitroでの確認実験をおこなう。CD38の細胞内ドメインのうち、PKによるリン酸化可能部位に注目している。さらに、リン酸化部位がCD38の生理機能に役割を果たしているかについて、野生型CD38発現細胞と変異CD38発現細胞の間で比較する。PKは別蛋白とヘテロマーを作るとされその蛋白が作用する可能性もある。PKの効果がはっきりしない場合、その蛋白のsiRNAないし活性型蛋白を作製して繰り返す。
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