研究課題
CD38蛋白はリンパ球表面抗原CDファミリーの一つであり、細胞内カルシウムイオン上昇に働くセカンドメッセンジャーであるサイクリックADPリボース (cADPR) やNAADPを合成する酵素としての働きを有する。先に行った質量分析実験より、CD38に結合するキナーゼ蛋白 (PKと略) が得られた。そこで今回、CD38の持つ生理機能、特にカルシウム波・細胞移動度・細胞増殖度がPKにより調節を受けるか等を検討した。方法として、HAタグを融合するhuman CD38 cDNAをHEK293T細胞にトランジエント導入し、細胞内カルシウム濃度を測定すると共に、wound healing assayにより細胞移動度を測定し、ついでPK阻害による効果を検討した。その結果、human CD38 cDNA発現細胞において、細胞内カルシウム濃度の上昇とカルシウム振動がみられ、細胞移動度も増加していた。一方、PK阻害処理を施した細胞では、CD38によるこれらの効果が抑制されていた。以上より、CD38により増強する細胞内カルシウム反応にはPKが関与していることがわかった。CD38は急性リンパ性白血病 (CLL)、HIV等の予後マーカーとして臨床で使われており、糖尿病との関連、最近では自閉症の症例において遺伝子変異があることもわかってきた。治療面においても、CD38による外傷性脳損傷からの回復促進作用が報告され、またがん治療の標的としても期待されている。CD38の活性化機構を調べる本結果は、これら疾患の病因解明や治療戦略に将来的に役立つと考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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