研究概要 |
1. 研究の目的:磁化移動(MT)コントラスト法は生体高分子と水分子間相互作用を反映する,組織特異的な分子イメージング法としてその有用性が期待されるが,得られるMR画像の示す物理的意味の詳細は不明な点が多い。本研究の目的は,その物理的意味合いを明らかにして磁化移動コントラスト法の基本原理を解明し,さらに細胞機能イメージング法に発展させることにある。 2. 具体的内容:1.5テスラのMR臨床機を用いて撮像するので,まず特殊な条件(磁場環境)下での実験系を構築する。すなわち,非常にシンプルな生体系としてラットの摘出灌流臓器(顎下腺)を用いて,種々の条件下でMR画像を撮像した。具体的には,顎下腺組織に状態変化を起こさせるために臓器灌流液中に加える薬剤の種類によって,(1)薬剤無し(コントロール),(2)カルバコールの投与,(3)[カルバコール+イソプロテレノール]投与群の3群に分けた。そしてそれら3群の系に対して,(1)MTパルス照射無し,(2)MTパルス照射あり(照射部位=5ppm, 7ppm, 19ppm)で撮像し,それぞれの状態における磁化移動比値の定性的かつ定量的な評価を行うとともに,顎下腺組織内の細胞密度および分泌顆粒密度を算出し,相関性を検討した。その結果,19ppmのMT画像は細胞外の分子イメージングを提供し,一方,5ppmのMT画像ではおおむね細胞密度を反映した結果が得られた。 3. 意義:特殊な環境下すなわち1.5テスラの磁場環境下で,ラット摘出臓器の灌流実験を行い,有用な知見が得られた。今後,より高磁場環境(3テスラ)での実験遂行の可能性が示唆された。 4. 重要性:1.5テスラ磁場環境下における摘出臓器のMT画像によって生体組織内の単一変化の傾向把握が可能なことが示された点で,重要な知見と考えられた。また顎下腺組織における細胞内外の分泌顆粒の存在,水分量の検出に有効であることが示された。
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