1.研究の目的:磁化移動(MT)コントラスト法は,生体高分子とその周囲をとりまく水分子集団間の相互作用の程度を反映することが知られている。その延長上に,生体組織特異的な分子イメージング法として臨床応用できることが期待される。本研究の目的はイメージコントラストが組織のどのような変化を反映しているのかを明確にし,さらに細胞・組織の機能を反映したファンクショナルイメージング法としての実用化を図ることにある。 2.成果の具体的な内容:本年度は本研究計画の最終年(3年目)にあたるために,より臨床的な検討を加えた。すなわち,今回は肝細胞がん患者48名の肝組織を対象とした。肝細胞の機能との対応を検討するために,3テスラMR臨床機で得られたMR画像(Gd-EOB-DTPA造影剤使用)と,肝機能を示す血液生化学的データとの相関性を検討した。その結果,肝細胞相画像の造影率は肝機能を示す血液生化学データとよい相関を示した。 3.意義,重要性:MR造影剤であるGd-EOB-DTPAは血流評価と肝細胞相の評価が可能であるが,本剤を用いた“肝細胞相画像”は肝細胞がんの検出のみならず,肝機能画像,すなわちMRファンクショナルイメージング法として,肝臓の病態変化を検出し得るパラメータであると考えられ,臨床応用への有用性が示唆された。
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