研究概要 |
心臓は,心筋細胞,内皮細胞,血管平滑筋細胞など種々の細胞から構成されている.近年ではcardiac progenitor cellsおよびside population cellsに分類される心筋幹細胞が組織内に存在することが明らかになり,これらの幹細胞を培養し,5'-azacytidine,oxytocin,trichostatin A等を添加することによって心筋細胞に分化させる方法が報告されている.申請者らは,マウス心臓において今まで知られていない細胞を探索するため,ランゲンドルフ灌流による成体マウス心室筋細胞単離の最終過程において,遠心によって取り除かれた上清分画(心筋細胞を含まない分画)を集めてmethylcelluloseを含む半固形状培地中で培養したところ、培養~4日後の接着細胞群の中に,丸い細胞本体の端が長く伸長し枝分かれした形態に変化するとともに自動的に拍動する細胞が出現することを見出した。この細胞は独自の形態を有するが,心筋細胞に特異的なタンパク質を発現し,洞房結節細胞に類似した自発的活動電位を記録した.また,長期にわたる培養においても分裂・増殖は見られず,幹細胞マーカータンパク質の発現もみられなかった.これらのことから,マウス心室から得られた拍動するこの細胞を新しい種類の細胞「非定型心筋細胞(atypically-shapedcardiomyocytes,ACMs)」として同定した.
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