研究課題/領域番号 |
22590204
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
尾松 万里子 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (80161397)
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研究分担者 |
松浦 博 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60238962)
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キーワード | ACMs / novel heart cell / self-beating / cardiomyocyte / cardiac ventricle / autophagy / Ca2+ transients / ischemia |
研究概要 |
申請者らは,マウス心臓において今までに知られていない種類の細胞の存在を探索した.ランゲンドルフ灌流による成体マウス心室筋細胞単離の最終段階で得られた「心筋細胞を含まない分画 (cardiomyocyte-depleted fraction, CMDF))を集めて培養したところ,枝分かれした突起を有した形態に変化するとともに自動的に拍動する細胞が出現することを見出し,atypically-shaped cardiomyocytes (ACMs)として新規に同定した.ACMsは新生仔期から老齢にいたるまで心臓に存在し,atrial natriuretic peptide (ANP)やT型Ca2+チャネル(CaV3.2)などの心筋胎児型遺伝子産物を発現していた.CMDF細胞を致死的な低酸素状態に曝露した後に培養すると,拍動を開始したACMsの数は正常酸素条件で得られた細胞数の約50%であった.また,単離した心臓に対して虚血・再灌流をおこなった後に細胞を調整すると,拍動するACMsの細胞数は無処理の心臓から得られた細胞の約90%であった.電子顕微鏡を用いてACMsの微細構造を観察したところ,細胞内に自食胞(autophagosome)が多数存在し,細胞膜にはautophagosome内残存物の細胞外への放出に伴う乳頭状突起(papillae)が見られた.ACMsにおけるオートファジーの恒常的活性化は,自動的拍動,ANPの発現,虚血耐性とともにこの細胞の特徴の1つとして挙げられた.心臓発生において,オートファジーが活性化するのは胎生期から新生仔期のみであり,本研究結果はACMsが胎児心筋細胞に似た特徴を持つ可能性をさらに示唆すると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは,成体マウス心室筋組織内に新規に発見した,非定型心筋細胞(atypically-shaped cardiomyocytes, ACMs)を安定して採取する方法を確立した.また,ACMsは機能的に心筋細胞であること,幹細胞の特徴を示していないこと,新生仔期から老齢にいたるまで心臓に存在し,atrial natriuretic peptide (ANP)やT型Ca2+チャネル(CaV3.2)などの心筋胎児型遺伝子産物を発現していることを明らかにした.さらに,ACMsは心室筋細胞よりも虚血耐性が高いことを見出した.これらのことから,ACMsが胎児期から胎児心筋細胞に似た特徴を保ったまま心臓内に存在している可能性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
ACMsが心室筋細胞に比べて高い虚血耐性をもつ原因の1つとして,オートファジーの活性化が考えられる.ACMsのオートファジーの実態と,その活性化がACMsの機能にどのような影響を与えているかを調べることによってACMsの生理的意義を検討する.
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