研究概要 |
超急速活性型遅延整流性K^+チャネル(I_<kur>もしくはKv1.5)はKCNA5遺伝子によってコードされ,ヒトでは主に心房筋に発現してその活動電位の再分極過程を制御している.KCNA5遺伝子の機能喪失により心房筋活動電位の再分極過程に異常をきたし心房細動の発症に関わることが示唆されている.またKCNA5遺伝子の一塩基多型はチャネルタンパク質の機能障害を伴うことも報告されている.本研究課題では,Kv1.5チャネルの細胞内輸送障害の発生機転の解明を行い,さらにはその細胞内輸送障害に対する低温培養や薬剤によるレスキュー効果のメカニズムを明らかにすることを目的とする.我々はKv1.5チャネルのボアからS6領域の数種類の変異体(T480A,I502A,I508A)を作製した.これらの変異体はワイルドタイプ(WT)チャネルと比較して電流量が著しく減少した(loss of function).興味深いことに変異体の遺伝子導入後に細胞を低温(27℃)で培養すると電流量がやく3~20倍増加したことを認めた.この現象はWTKv1.5チャネルにおいても認められた.またチャネルの細胞内局在については抗Kv1.5抗体を用いて検討したところ,37℃培養に較べると低温培養ではKv1.5が細胞膜表面により多く発現した.またWestern blotによる検討では膜タンパク質の特異的なシグナルが検出された。これらの実験結果は,T480A,502AおよびI508A変異体のチャネルタンパク質は小胞体内に留まり,細胞膜へ正常に輸送されにくく,電流量の減少という機能障害が生じた可能性を示唆した.また低温培養により変異体チャネルの機能障害がある程度改善されたと考えられる.今後,WT Kv1.5およびそのmutantsを用いてどうして低温培養により改善されるのかは引き続き検討したい.
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